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番外:下鴨と関係ない人「とあるアパレル販売員」2
「すみません、これ、色違いありますか」
聞かれて視線を下に向けると勝気な瞳のかわいい女の子。
手に持っているのは真っ黒の帽子。
ダークブランの髪の毛は生花を編みこんで右側でまとめている。
いつもながらに凝った髪型に内心で頭を下げる。
ウチの服に合わせてオリジナルのヘアースタイルを作っているのは誰なのかとても気になる。それ以上にかわいく着てくれてありがとうの気持ちだ。
「どんな色がご希望でしょう。白、空色マーブル、桜色などございますが」
屈んで女の子の目線に合わせる。
女の子が持っている帽子のタイプは在庫が乏しいので店頭から撤収させてしまった。
私の言葉に少し考えた女の子は「このコサージュが似合う帽子がいいの」と自分の鞄を指さす。
そのコサージュは見覚えがないけれどかわいいと思って私はピンときた。
以前にオリジナルコサージュ作りの話を私は彼女にしたのだ。
ショッピングモールのテナントに手芸屋さんがあるのでそこを案内しながら雑談のように良かったらどうぞと言った。
オリジナルのコサージュは鞄につけるのもいい。
帽子にだってもちろん似合う。
女の子の手にあるベーシックな形の帽子はオリジナル帽子を作る土台として大正解だ。
私は店の外を見る。ベンチにいつものように座っているお連れさまが明るめな色の服を着ているのを見て私はすぐに大人用と子供用の帽子を持ってくる。
色合いは白をベースに黄色と緑が濃淡さまざまに溶け合っている。
私はハチミツレモンと呼んでいる爽やかな印象のデザインだ。
そろそろ季節外れになってしまうので奥に引っ込めていた。
コサージュは青や紫などで作られているので帽子と合わせても違和感がない。
買っていただくのは帽子ではない。コサージュの似合う帽子であるべきだ。
そして何より、ベンチに座って動く気のないお連れさまに似合うものでないといけない。
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