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番外:下鴨と関係ない人「とあるアパレル販売員」3
「失礼、こちら少しお借りしていいですか」
娘の動きを傍観していた美形さんに袋から出した真新しい帽子を横から指さされた。
最初に見たときは年の離れた兄妹か親戚の子を預かっているんだと思った。
そんな記憶が薄れるほどに父と娘としか思えないやりとりを見てきた。改めてご贔屓にしていただいてウチの店は幸せだ。
いつもご来店ありがとうございますと心で思いながら「どうぞ、お持ちください」と私は笑顔で帽子を差し出した。
美形さんが迷いのない動きで帽子を持って店外に出る。
店の前に設置されたベンチに座っているお連れさまに帽子を乗せて、数歩後退して全身を見る。帽子をかぶった顔だけではなくトータルを確認していて印象がいい。美形さんが美形なのは一つのアイテムに固執するダサい男じゃないからかもしれない。同じTシャツを延々着ている男は本当に気持ちが悪い。
ベンチの近くを歩き回っていたらしい息子さんたちと会話をして帽子を持って店内に帰ってくる美形さん。
女の子に一言「ありだな」と言った。
販売員である私に丁寧に話しかけるのに自分の娘にちょっと雑な感じに話しかけるギャップ。
その上、買うと決めたものは必ず買う決断力と経済力。素敵抱いてと心の中で思うもののお連れさまにあれだけ尽くしているのを見てしまうと入り込める要素がない。
帽子と靴下と珍しく娘さんとセットではない紫外線カットされたブラウスを数点購入された。
ショッピングモールのベンチに座りっぱなしのあの方が日中に外で動かれるのだろうか。
いつもとは違う購入ラインナップに心の中で勝手な予想をたてながら仲がよさそうな父と娘を見送った。
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