114 / 192

番外:下鴨家の人々プラス「海問題35」

(2話先の話を間違えて投稿していました。2時間ぐらいで気づいて差し替え) 下鴨弘文視点。    弘子が鈴之介を自分のグループに入れている時点で勝ちに来ていると思っていたが、あちら側の圧勝すぎる。点数に差がつきすぎた。  プロポーズする宣言をした二時間前の俺が泣いている。    弓鷹も久道もがんばったが、鈴之介の無敵ぶりを舐めていた。弘子が放置した植物図鑑なんかを手持無沙汰だからと目を通す真面目な子。優等生に無駄な時間はない。植物博士を気取る予定がなくても目にした知識をきちんと吸収している。    弘子は植物ではなく野生動物を狙って見事に高得点を連発。  写真として面白い構図が多いので評価したくなる。     「お前はたなぼた男なのか」      瑠璃川の用意した高級食材を前にして「家で食べないやつがいいよなー」と子供たちに同意を求める康介。特に何もしなくても勝つ陣営に所属しがちなのは下鴨として特殊な磁場が形成されているのか。   「ぼた餅ないだろ。弘文からの愛の囁きイベントがキャンセルされたんだぞ!」    拗ねた顔の康介を撮り続けるヒナ。フラッシュがたかれているので無音でも視覚的にうるさい。康介におもいきり変な顔をさせたくなるが、弘子に怒られそうなので何とかこらえる。   「棚から落ちてきたぼた餅とかカビてないか心配になるから食べるなら餅は自分で買う。棚からとか、正体不明すぎて怖い」 「ことわざにケチつけるなよ。面倒くせえな」    暑いのか上半身を脱ごうとする康介を弓鷹がカメラを見ながら止める。ヒナのシャッターは止まらない。何千枚どころか何万枚でも撮る気でいる。おおよその選別もヒナがして、最終チェックが俺や弘子になるはずだ。被写体が自分でも康介は関わろうとはしないだろう。   「あ、なあ残飯ってやっぱり今でも残飯がいいのか?」 「お前、ヒナに残飯って呼びかけるの止めろよ」    その辺の木の枝で攻撃してきても不思議じゃない。さっきまで平気だったことが次の瞬間にダメになるという気分屋なところがヒナにはある。殺さないまでも傷つけて自分の跡を残したいという頭のおかしさが発症しないとも限らない。   「いま気づいたけど弘文、久道さん、ヒナでヒヒヒか。どうでもいいけどヒばっかり」 「特に意味のないことを言うために俺の発言無視しやがったのか」 「昔は久道さんを久道さんって呼ぶことなんかなかったから良かったけど、今はヒって音だすと反応する人多いなって」 「弘子を弘子にしたのはお前だって覚えてるよな」    目を細めて「ヒヒヒばっかりより残飯があるほうが分かりやすいって言いたかった」と不満気だ。理由にならない理由で残飯呼びされる人間の気持ちを考えない康介。堂々とした人でなしっぷりだが、子供たちは聞き流しているのか夕飯よりも花火の予定で盛り上がっている。子供たちのたくましさの原因が康介だとしても常識から逸脱しすぎるのは問題だ。   「で、残飯は残飯じゃないと口にしたくない感じか? 大皿料理の余りがお前、みたいな」    自分に語りかけられているのをヒナはしばらく理解しなかった。残飯呼びで反応できなかったというよりは康介が自分の声をかけると思わなかったらしい。ヒナの怒りや悲しみが急に爆発しないか緊張して見ていると首を横に振るだけで返事をした。  久道もヒナが何かしないように警戒しているが、俺よりも楽観視しているのか笑っている。

ともだちにシェアしよう!