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「海問題 弘文による康介の感動の不始末1」
下鴨弘文視点。
康介が一度、俺が飲んでいる酒を横から奪ったことがある。
俺が飲み食いしているものをなぜか欲しがる子供のようなところが康介にはある。
子供が出来てからは「うちの子は違う」と否定を入れたくなるので、康介に子供のようなという形容は間違っていると感じることが増えた。
だが、康介のすることは子供じみている。
子供っぽい考えからやらかすことが、子供では済まないことになる。
酒を飲んだときの反応なんかが特殊すぎて冗談にならない。
一応検査したり医者に聞いたが体質と自己暗示でありアレルギーや病気などではないという。
康介が酒を飲んだ時の反応というのが、今の目の前にある脱力状態。
変なクスリでも盛られたのか疑いたくなるほど身体に力が入っていない。
度数が高くなるほどに動かなさが増すとバニラアイスにかけるのをウォッカにしたときの反応で知った。
声も上げられずに全身熱くさせている状態をレストランでも居酒屋でも作り上げるわけにはいかない。
うにゃうにゃ、あうあう、声にならない訴えを繰り返す康介。
頭を撫でると嬉しそうに目を細める。
康介は出会った中学の頃が「小学生ほどの美少女」なら、高校は「残念な美形」だった。
今はどうなのかというと口を開かなかったらというところは高校の時から変わらないが、美形の度合いに幅が出た。
艶が出たというのが正しいのかもしれない。
「そろそろ動けるか?」
筋肉弛緩剤でも飲んだのかというほど動けずにいた状態から康介は復帰する。
これの状態の時に万が一「ずっと動けねえんだろうな」と言ったら康介は動かなくなる気がする。
そのぐらいに康介の反応が劇的に変わる。一種のトランス状態なんだろう。目の焦点が合っていない。
「人形に何かしたいわけじゃないからな」
俺に寄り掛かっていた康介が抱きついてくる。
離れるのを嫌がるように頭を横に振る。無言だ。
酔っぱらい康介にはいくつかパターンがある。脱力時の無防備さが人目に触れると危険であるのとそれ以上に今がヤバイ。
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