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プロローグ
時は江戸時代。
栄之進 と悠之介 はそれぞれ、武家の元に生まれた。
互いは隣人で、幼少の頃から仲良く育った幼馴染み。
庭にある大木で木登りをしたり、相撲をとったり。
藩校に入る頃には一緒に通っていた。
歳上である栄之進は悠之介を弟の様に可愛がった。
ある日、藩校からの帰り道で悠之介が同級生に虐められているのを見つけた栄之進は
すぐさま助けに入り、悠之介を救う。
同級生に非があるとはいえ栄之進はやりすぎてしまい、相手を怪我させたという事実は父親に大層咎 められた。
数年すると、悠之介は栄之進の背を抜いていた。
お前に見下ろされるとは、と栄之進はよく口を尖らせた。
それでも悠之介はいつも助けてくれて甘えさせてくれる「兄」のような栄之進を慕っていつも一緒に過ごした。
あまりにも甘えてくるものだから、栄之進の母親もよくからかっていたほどだ。
そして。
栄之進は武家の長男として生まれた為、年齢を重ねる毎に「家を継ぐ」という
重圧を感じる様になっていた。
心身鍛練の武術、武士の作法…
外出の際に必ず差す大小2本の刀が、年々重く感じていた。
背を正し、気を抜かない生活がこれから続くのかと思う反面、武士とはそういうものだと
諦めていた。
一方で、同じ武家に生まれた悠之介は三男であった為、家を継ぐ事もなく実家で居候生活だ。
他の家に養子へ出たりしない限り、部屋住みとなる。
本人の性格もおおらかでゆったりとしていて武士には見えない。
いつも気を張っている栄之進にとって唯一、自分に戻れるのは悠之介との時間だった。
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