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エピローグ

「流石に面影もなくなってるね」 眼の前に広がっている公園を見ながら彰光が呟く。 屋敷があった場所を訪れてみようと言い出したのは彰光だった。 訪ねてみるとそこは公園に整備されていた。 せっかくなので、あたりを散策してみる。 全く景色も変わってしまっていた。 「まあ変わってないと恐ろしいけどな…」 北川が笑う。 「でもさあ、ここ!」 彰光が突然指差してきた。 道端に咲くのは純白の花。 甘い香りを漂わせる、クチナシ。 弓道場からの帰り道によく見かけていたあの花だ。 「すごいな」 二人は笑い合いながら、クチナシを見つめた。 「お前、何であの時辻斬りに斬られた?」 不意に北川が真面目な顔を見せて問う。 「…自分でもよくわかんなかったんだ。やけになったのかどうか。 ただ一瞬、これで早く生まれ変わって栄之進と出会えると…思ったのかも、しれない」 遠い目をしながら彰光は初夏の風に髪をなびかせていた。 「そうか」 北川はそれ以上何も言わない。 「でもさ、もし北川さんが栄之進の生まれ変わりでなくても僕は好きになっていたよ」 突然そう言いだした彰光に、北川が驚く。 「北川さんにも惹かれてたよ。僕は栄之進も北川さんも、二人とも大好きなんだ」 「お前…ッ」 真っ赤になった北川を見て悪戯っ子(いたずらっこ)のように笑う彰光。 言葉には出せていないけど、北川も同感だった。 彰光に惹かれていった自分がいたからこそ、栄之進としての記憶も蘇ったのではないかと。 いつの日かそのことを彰光に伝えよう。 北川は彰光の頭を撫でながらそっと唇を重ねた。 「ん…」 あの時代に叶わなかった一緒に居られる幸せを、この時代に存分に味わおう。 それからは、北川があの夢を見ることはなかった。 【了】

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