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甘い匂いに誘われて
窓から差し込む光に身体を起こし、だらだらとしながらも、今はキッチンから聞こえてくる物音とその後に続く甘い匂いに誘われ、まだ起きたくないと言う身体と人間の3大欲求である食欲が喧嘩をしてもぞもぞと布団の中で何度も寝返りをうっていたが、結果は空腹の勝利。
ゆっくりと身体を起こし、欠伸を一回。
まだ、覚醒はしない頭でふらふらと部屋からリビングに向かい、ドアを開ければ甘い匂いが鼻をかすめると同時に元気な声で挨拶をしてきた好きな人。
「楓さん!おはようございます!」
僕は寝ぼけた声で返事をすると甘い匂いが、スリッパの音をたてて近づき、眠い?と僕の顔を覗くいてくる。
ふわっと香るバニラ香料の匂いに誘われて、彼の耳におでこをつければ、慌てふためき騒ぐ彼に思わず笑みが溢れた。
「甘い匂いがする」
「ホットケーキですよ食べますか?」
「うん」
寝ぼけた僕の腰に回してきた手に抱き寄せられ、彼の優しい声と甘い匂いに包まれ、睡魔がまた顔を出し、重い瞼がゆっくりと閉じていった。
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「包まれる香り」
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