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番外編:俺が会長に振り回されていると思われている件について1-3

「好きだから緊張したりとかいろいろあるだろ」 「あー、そう。ぜんぜんわかんねーけど、そっか」 「わからないんですかい、副さん」 「委員長におまえはべったべたに甘えてんだと思ってたわ」 「どうしてそんな思い込みに!?」  これでも俺は風紀委員長として彼のことを尊敬して一歩引いているつもりだ。  年上であることもあって、必要以上に馴れ馴れしいのはよくないと心理的にブレーキがかかってる。 「風紀室に来たらあたりまえに隣に陣取って、委員長の飲み食いしてるものを分け与えられて、頭なでられ肩を抱かれ」 「待って、もういいっす! そういう日もたまにはあるだろうけどね!!」 「いつもだ」  眉を寄せた副委員長に溜め息を吐かれた。 「一時期、二人羽織状態で登校してただろ。まわりドン引きだったぞ」 「いやあれはドン引きさせるのが狙いっていうか……俺たちのラブラブを見せつけようぜ計画みたいな」 「そーなん? 大成功だったな」  思い返すと俺にもいろいろあったもんだ。 「とにかく俺はべつに会長のことは嫌いじゃない」 「むしろ好き?」 「うん? まあな?」 「だよねー、知ってるわ。俺も栄司のこと好きだから! 両思いっ」  俺の言葉に反応を返しているのがいつの間にか副委員長ではなく会長になっていた。  声質は全く違うので気がつかないわけがないが、ついノリで答えてしまった。 「えいじー、元気かー」 「元気です」 「お兄ちゃんは一秒栄司と離れるごとにHPが減っていく呪いにかけられてますよ」 「毒では死なないから大丈夫。HPがイチになったらまた来て」 「さすがは栄司さんやで! このクールなところがたまりませんなあ」 「適当な関西弁使うのキモいっすわ、会長」 「……冬式と同じことを言う副くんだ」 「あぁ、そういえば言われてましたね」 「栄司はそんなこと言わんもんね~」 「言いませんなぁ」  わりと口調が適当な人なので、関西に限らず適当ななまりを取り入れたりする。  覚えたての言葉を使たくなる子供みたいで微笑ましい。 「意外に仲いいんだな……」 「不仲説が流れること自体ありえねえわ。俺がこんなに毎日栄司を愛してるって言ってんのに」 「会長がこいつと仲悪い方が都合いい人がいっぱいいるってことでしょ」  知ったこっちゃねえなと言いながら俺の頭を撫でる会長はやっぱりどこからどう見ても格好いい人だ。こんな人に目に入れても痛くないほどに愛されて大切にされてるのはくすぐったい。けれど、これは疑いようのない絶対の事実だ。 「栄司だけいれば俺の人生はいつでもハッピーだよ!! 今日の夕飯は何かなあ? カニかな?」 「じゃあ、カニ玉」 「カニ玉って三か月ぶりぐらいじゃんか! 楽しみだっ」  弟としか見られていないと周りに訴えていても妬まれない日が来ないのは仕方がない。  俺と話しているときの会長は目に見えてウキウキしている。他人と俺とでは対応が違う。気恥しくてもやっぱり嬉しい。  風紀の副委員長が巻き添えを食らいたくないからか、無言のまま俺に手を振り去って行った。  こういうときに親衛隊が話しかけてきても会長はとりあわない。脳内にカニ玉しかないからだ。  後日、俺が敵意をもろに食らったりもするけれど、今は俺もカニ玉のことだけ考えていればいい。  余談だが副委員長から何を聞いたのか、風紀委員長である彼に玄関先でメチャクチャキスをされた。力が抜けてカニ玉をうまく作れなくなってしまった。そのせいでメニューを変えることになる。  当然のように不機嫌になった会長。そして、憮然としている彼。  そんなふたりに挟まれながら食べるパスタは味がしなかった。

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