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【25】二週間が経過

誘拐犯についてきて二週間が経過した。 錦はバーベキューテラスのデッキに腰かけ、なだらかな丘を眺めていた。 どんなに遅くに就寝しても朝6時には起床する。夏休みでもそれは同様だ。 鮮やかな緑の丘、木々の遠く隙間から見える海と太陽。 蝉の声、時折姿を見せる揚羽蝶。何度見ても何時間見ても飽きない景色だ。 なにより、最も錦の心を捉えたのは朝の紫外線に焼かれる海だった。 キラキラと輝いて美しい。これは見なくては勿体ない。 太陽がある程度の高さになり部屋に戻れば時刻は8時。何時ものようにニュースを見て、そして朝の不倫をテーマにした連続ドラマが始まると速やかにテレビを消す。 それにしても――奇妙だな。 二週間だ。 自宅では錦の失踪はどのような扱いになったのだろう。 無断外泊、家出、誘拐、このどれかに間違いはない。家事使用人だっているのだ。二週間経過したのに子供の不在に気が付かない母ではないだろう。自宅の様子が気になったが、情報を得る方法が無い。 終業式を終え自宅に帰った形跡が無いならば、家出か事件に巻き込まれた可能性を考える筈だ。取り敢えず警察に捜索を出したと仮定し、誘拐と判断されれば犯人を刺激することを恐れ警察は大きな動きはしないだろう。もしも単純に誘拐だけではないと判断した場合、情報公開へと切りかえるはずだ。――多分。 誘拐されたときの経験では、最低でも2日以内には帰宅できたから、ニュースには成らなかった。 もうしばらく様子を見た方が良いだろうか。

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