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あなたが好きだと言ってるじゃない〜結〜11

美影ちゃんは負けじとボクの腕を振り払うと、まじまじとボクと美影ちゃんの顔を見比べていた悠貴さんに近づいた。 悠貴さんは自分をものすごく睨みつけている美影ちゃんに、 「薫の兄弟?・・・双子か?」 「そうよ」 「ふぅ〜ん・・・一卵性?」 「・・・何で判ったの?」 異性の双子だから、たいていの人が二卵性と思うのに、一卵性と指摘されて、ボクも美影ちゃんも驚いていた。 「そりゃ医者だから、そういう事例があることも知ってるよ。二卵性にしては顔も体つきも似すぎてる。日本でも生まれたって聞いたことあるが、それが薫だったとはね・・・」 面白そうに悠貴さんはボクと美影ちゃんを見比べている。 そして不意に美影ちゃんの顔に、顔を近づけて、 「あんた美人だけど・・・薫のほうが可愛いな」 と、いきなりとんでもないことを言う。 「当然よ!」 そして美影ちゃんもとんでもないことを言う。 「え?!ちょ・・・」 美影ちゃんは何故か腰に手を当てて、仁王立ち状態になり、自慢気に言い放った。 「薫はそりゃあもう、そこらの女なんか太刀打ちできないくらい、可愛いの。可愛すぎて、可愛すぎてもう閉じ込めて置きたいくらい可愛いの。素直だし、優しいし、繊細で泣き虫で、私が守ってあげないと死んじゃうのよ」 「美影ちゃん・・・何言ってんの?!」 ボクは美影ちゃんの腕を掴んで、再び引っ張った。 美影ちゃんはくるりとボクを振り向くと、にっこりと笑った。 「だって、薫のお姉ちゃんだもん。薫は私が守るわ」 「美影ちゃん・・・」 「だから」 美影ちゃんは顔だけ悠貴さんに向けると、 「あんたなんかに薫は渡さない」 それだけ宣言すると、美影ちゃんはボクに向き直って、再び笑った。 「じゃあ、仕事行くわ。薫は早めに家に帰ってね。みんな心配して、あまり眠れなかったんだから」 そして美影ちゃんは、言うだけ言ってすっきりしたらしく、軽い足取りで病院を後にした。 嵐が去った後というのはこんな感じかと、ボクは茫然と美影ちゃんの後ろ姿を見送っていた。 きっと美影ちゃんは、悠貴さんを見に来たのだろう。 ボクの初めての恋人を、確認しに来たのだ。 「相当なブラコンだな。重度のブラコンだ。薫も大変だな」 悠貴さんがボクの隣に立って、そっとさり気なくボクの手を握る。 手から悠貴さんの熱が伝わって、ボクは顔が真っ赤になるのがわかった。 「でも、美影ちゃん優しいし、頼もしいしんですよ」 「これからあれと戦うのか・・・オレも大変だ。でも薫が家族に可愛がられて、愛されて育ったのがわかった」 「ええ・・・本当に・・・可愛い可愛いって甘やかすんです」 ボクは溜め息をついて悠貴さんの手を握り返した。 「うん、薫は可愛いから、仕方ない」 悠貴さんが真っ直ぐにボクを見つめて言うので、恥ずかしくなって俯いてしまった。 顔の火照(ほて)りが収まりそうもない。 悠貴さんは空いているほうの手で、ボクの頭をぽんぽん撫ぜると、 「さてと。仕事に戻るぞ」 「はい」 ボクは顔を上げて悠貴さんを見上げると、にっこりと微笑んだ。 あなたが好きです。 誰よりも好き。 悠貴さんが好き。 大好き。 Fin

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