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あなたが好きだと言ってるじゃない〜結〜10

「み・・・美影ちゃん・・・?!」 「良かった!生きてた!もう、心配したんだから!ばかばか」 「あの、落ち着いて・・・何で来たの?」 「何で?!」 美影ちゃんはボクの背中から離れると、ボクの体を向き合うように回して、怒ったように瞳をきつく光らせる。 「何の連絡もなく外泊して、何度かけても全然電話出なくて、やっと出たと思ったら誰かといちゃいちゃしてて・・・そりゃ、心配になるに決まってるわよね?!」 「・・・すみません。連絡しなかったのは、悪かったと思ってます。ごめんなさい」 ボクは素直に頭を下げた。 美影ちゃんは決して頭が悪いわけではないので、こうして論理的に責めてくる。 今日は美影ちゃんは、これから仕事に向かうのか、フルメイクに短い丈の黒いシックなワンピースを着ている。 そのフルメイクの顔で激怒されると、本当に恐い。 しばらくそうやって怒って色々言って来る美影ちゃんに謝っていると、白衣のポケットに入れている院内用PHSが震え出した。 「美影ちゃん、ごめん・・・ちょっと待って」 ボクは、怒っている美影ちゃんに背中を向けると、PHSを取り出して耳に当てる。 「花織です」 「羽屋総だけど、いつまでかかってるんだ?」 悠貴さんの声が耳元で聞こえて、心臓が早くなるのを感じる。 「すみません、すぐ戻り・・・あ!」 不意に手からPHSが取り上げられる。 今朝もこんな感じだったのを思い出し、悠貴さんかと一瞬思ってしまった。 もちろん悠貴さんではなく、美影ちゃんが苛々したように眉根を寄せたまま、PHSに向かって、 「今、大事な話ししてるの。あとにして!」 そう言い放って通話を切ってしまった。 「美影ちゃん・・・何てこと・・・」 「いいから。そんなことより、聞いてるの?昨夜は何処に泊まったの?今朝の電話の人は誰?」 「・・・それは今日帰ってから話すから」 「私、今日は夜遅くなるの。今、教えて」 「ボク、今仕事中だから・・・」 ボクは美影ちゃんに部長とのことを話そうか、話すまいか迷っていた。 美影ちゃんはいつもいつも、ボクが誰かを好きになると、横やりを入れて邪魔するからだ。 そうやっていっつもボクの恋を壊す。 悠貴さんとの戀(こい)は、絶対に失いたくない。 初めて、ボクを好きになってくれた人。 失いたくない。 美影ちゃんと押し問答していると、美影ちゃんの後ろに、長身の影が立った。 あまりにボクが遅いから、悠貴さんが迎えに来てしまっていた。 悠貴さんは呆れた顔をして、軽く溜め息をついている。 「薫、何してんだ?早く戻りなさい」 「悠貴さん・・・!」 思わず名前で呼んでしまってから、しまったと思う。 勘のいい美影ちゃんは、瞬時に振り向いて悠貴さんをじろじろと見つめる。 「その声・・・今朝の電話の声だわ。あんた、誰?」 「美影ちゃん・・」 ボクは美影ちゃんの腕を掴んで自分のほうに引っ張った。

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