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第2話
俺の名前は水沢翔 。ここ聖応 大学の2年で心理学を専攻している。自覚するくらいには短絡的な性格は猪突猛進だと周りに迷惑をかけることも多く、何とかしたいところだ。
春も終わりに近づいた5月半ばの中庭のベンチに腰掛けながら木々のざわめきの中ぼんやりしていた。
「翔?なにぼーっとしてんの?」
俺に気づいた江角慎吾 が校舎に向かっていた足をゆっくり俺のいるベンチへと方向を変えた。
あまり表情の変わらない慎吾は、「不機嫌そう」とか「無愛想」と言われることが多い。
切れ長の一重の目が余計にそう思わせているのかもしれない。
それでも女の子からは無愛想で細身な慎吾はクールに見えるらしくモテていた。意外に慎吾は世話焼きでもあって、周りの友人から「翔の保護者」と言われるくらいには俺の世話をやいてくれている。
確かに慎吾が俺より落ち着いているのは事実だけど、保護者に見えるのは身長差もあると思うんだよな。
165cmの俺に対して慎吾は178cmと高い。猫背を直せばそんなに差はないと慎吾は言うけど10cm以上の差は猫背の問題じゃない。
見慣れたとはいえ俺も慎吾くらい背が高ければよかったと思ってしまう。
慎吾とは高校の時からの付き合いだからもう5年になる。思ったことをすぐ口に出してしまう俺とは違い、一度言葉を飲み込んでから話す俺とは正反対のタイプの慎吾に何度助けられたかわからない。
「慎吾。2限目から?」
「お前もだろう。」
ぼんやり見上げる俺に慎吾が苦笑しながら言う。
「そうだった!」
慌てて立ち上がり歩き出した慎吾の後を追った。
不本意だが、周りの奴らが慎吾は翔の保護者だなと笑う気持ちも否定はできない。
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