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第83話

「言わないのか?」 佑真さんの茶色い瞳が暖かい光を宿している。 佑真さんの目を見ていると俺の考えなんか全部見透かされている気がしてくる。 「佑真さんは……俺の事どう思ってるんですか……」 この言い方はずるい、ずるいと思うけど、喉から心臓が飛び出しそうになっている今の俺にはこれが限界だ。 そんな俺に仕方ないなと小さく笑い、 「好きだよ」 と俺の耳に届いた透き通るような少し低い佑真さんの声に一瞬何を言われたのかわからなくなった。 え?何?好き?佑真さんが俺を?それって俺と同じ意味での好きなんだろうか。 さすがにこの流れで恋愛偏差値の高いこのイケメンが友達として好きとは言わないはずだよな。 でも可能性がないわけじゃない。 聞こうと思うのに、頭の中で好きだよと佑真さんの言葉が何度も繰り返されて声帯が動いてくれない。 何か言おうとぱくつく俺の口を目を細め微笑む佑真さんの唇が塞いだ。 これってやっぱりそういう意味で好きだって言われたって解釈でいいんだよな。 回らない頭でぼんやり考える俺に角度を変えて口づけが続く。 「は……ぁ……」 苦しくなる呼吸に少し開いた口から熱い息が漏れる。 ふっと笑った佑真さんが俺の後頭部に回した手に力を込めるとさっきよりも深く唇が重なった。 ゆっくりと入ってきた佑真さんの舌が俺の舌と絡みあうと今までにない多幸感に満たされ熱くなる瞼を閉じた。 恋愛経験のない俺にはこんな深いキスどころか普通のキスだってした事がなかった。 キスってこんなに気持ちいいのか。 佑真さんの舌が確認するようにゆっくりと俺の咥内を一回りしたところでそっと唇を離した。 「翔が好きだ」 そう言ってもう一度軽く唇に触れてから俺の額にこつんと額を当てた。 「佑真さ……ん」 キスのせいなのか早すぎる鼓動のせいなのか整わない呼吸に涙が溢れてくる。 「どうして泣くんだ」 佑真さんの長い指が頬を伝う俺の涙を優しく拭ってくれる。 「俺、夢みたいで、佑真さんが、好き、で……」 涙で声は掠れていたけど、好きだと伝えられる事がどうしようもなく嬉しくて笑みが零れる。 「俺が翔の居場所になるから、もうどこへも行かないでくれ」 強く俺を抱きしめる佑真さんに、ずっと一緒にいさせて下さいと満面の笑みを浮かべたままこたえた。 この先、俺や佑真さんの気持ちが変わってしまうことがあるかもしれない。 だけど今は変わらないと信じている。 嘘じゃない今を佑真さんと笑いあって生きていきたい、この先もずっと――。                                                                                                            Fin

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