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第5話
真っ赤な海のようなんだ。
燃える朝日の色に飲まれる。
翻弄される。
「お前の返事が聞きたいよ」
俺は求められている。
「お兄様が欲しいのは、お前だけだ」
こいつは俺の兄なんかじゃない。
でも………
「今夜は兄弟水入らずですね、MSS!」
(お前は~~)
どうして、口を挟んでくる~
いつも、いつも、いつも、いつも……
(課長ー!)
この男は、俺の兄では……
「例の部屋は押さえてあるか」
「はい、三上 MSS」
三上……っていうんだ。
(この人……)
兄だと言ったのに。
(俺は辻 で……)
苗字が違う……
ぽんぽん
大きな手だ……
あったかくて……
おっきくて……
(なんで、こんな事するんだ)
俺はエグゼクティブ・バトラーだ。
他人の手は要らない。
頼る気は……
「寂しそうに見えたから」
声は、手の温もりと共に降ってくる。
「いけないかい?お前を慰める事も、お兄様には許されないのかい?」
お前は俺の……
(兄じゃない!)
………………でも
トゥルルー、トゥルルー
思考を破る内線が鳴り響く。
「準備ができました、MSS」
「ありがとう。君は仕事の出来る男だね」
どこがだ?
やはり、お前の目は節穴だな。MSS
「お褒めに預かり光栄です」
社交辞令だよ、課長!
「藍樹君、今夜は兄弟水入らずだね!」
ちがう!
こいつは兄じゃ……
「MSS、兄弟水入らずでごゆっくりおくつろぎください」
人の話聞けよ、課長ッ
俺はエグゼクティブ・バトラーだぞ。
なにがMSSだ。胡散臭過ぎる役職だろう。こんな奴に媚びへつらうんじゃない。
「結婚しよう」
………………は。
今、なんつった?
MSS
「私と結婚しようか、藍樹」
なんなんだーッ
俺はホテルのエリート エグゼクティブ・バトラーだ。
「寿退社かな?」
空気まったく読まん展開はなんなんだーッ
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