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第29話

俺が求めた以上の熱い口づけが返ってくる。 涙に濡れた頬を包む。 熱い体温だ。 大きな掌で俺を包む。 「お前は忘れていなかったんだね」 あなたは俺を『お前』と呼んだ。 「涙が輝いたんだよ」 あの夜 二人結ばれた夜に見たね。 そらから流れ落ちた火球のように。 月と木星が寄り添った夜 星が流れた。 「流れ星は願いを叶えるんだ」 真昼に流れた星の雫が…… 「お前と私の願いを叶えたよ」 愛したい。 愛されたい。 ずっと愛したい。 愛され続けたい。 もう一度 お前と、 あなたと、 結ばれたい。 欲張りな願いだけれど、全部大切な願いなんだ。 「ありがとう、藍樹。あの日の夜を忘れずにいてくれて」 「当たり前だ!」 「当然だよ。お前は私が見初めた弟だ。これからは、お兄様が守ってあげるよ」 タクシーから飛び出した。 運転手に三上が一万円札を渡す。 ヘルメットが飛んで来た。ヘルメットを被るとバイクに飛び移って、ぎゅっと背中にしがみつく。 大きな背中、もう離さない。 どこまで走ろうか。 どこだっていい。 あなたがいる場所ならば、どこでも…… どこまでだって行きたいな。 俺は、あなたのΩ

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