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第31話【完】
嘘つき……
俺は、お前の嘘を見抜けなかった。
だから別れたんだ。きっと……
αが三上だけだというのは嘘で……
御木本も。
αの力を持っていた。
けれど御木本のαの力は、Ωの第二性を与える力ではない。
御木本の力は『死期を見る力』
御木本には、βに迫る死が見える。
(俺は、本来ならとっくにもう死んでいた)
けれど。御木本は俺を死なせたくなくて……
俺と別れて。
なのに突然、俺の前に現れて、俺をΩにしようとして……
俺の運命を変えて、俺から死期を遠ざけようとしていたんだ。
……そう三上が教えてくれた。
俺の死期が見えたから、御木本は現れた。暴走車から俺を守って、あいつは……
「勝手に殺さないでもらおうか」
「御木本!」
「俺の運動神経を見くびるな。全治2週間の診断だが、入院は念のための検査入院だ」
「ヒャアっ」
「病院ではお静かに」
お前が!
俺の尻を撫でたから、変な声が出たんだっ
「変な声?気持ちいい声の間違いだろう」
「ナッ」
すりすり~
このエロ亭主が!
ぺしぺしっ
すりすり~
ぺしぺしぺしっ
すりすりすり~
どんなに叩いても止める気がない。
「お前の尻も俺のものだ」
「俺のもの」
所有権は俺!
「マーキングしただろう?」
マーキング?
「俺の種を注いで、たっぷり♪」
「ギィヤアアァァァ~♠」
「マーキング済みの尻は俺のものだ」
すりすりすり~
「ムギャアァァァ~♠」
「一つ訂正しておこう」
闇の火が双眸の中で静かに燃えた。
「俺はαではない」
Ω性を与える力を持たない俺は……
「βだ」
唇が厚顔不遜に笑んだ。
「誰がなってやるものか。大嫌いな兄と同じαなんかに」
「それは私だって同じだよ。お前と同じαは心外だ」
「三上!」
御木本の腕の中で、舞い降りてきた唇が熱い。
抱擁されたままで俺は三上にキスされている。
「お前が選ぶんだよ」
彼岸花の花びらが降ってきた。
真っ赤な双眸に見つめられているのに、酸素が足りなくて、ぼうーとする。
俺は、なんの答えをもとめられているのだろう。
「お兄様か、弟か」
「お前の夫は、どちらがいい?」
「Ωでないお前に媚薬を塗って、発情期だと偽り、自分を運命の番に思い込ませた卑怯なβよりも、お前を本当に愛している誠実なαを選ぶだろう?」
「卑怯で狡猾な手段に染まっても、お前を奪いたい。素直なβが好きだろう?」
えっ、えっ、えぇぇぇーっ!!
俺は、俺はァァァー!!
「藍樹」
「藍樹」
チュッ♥
チュッ♥
右の頬っぺたに三上が、
左の頬っぺたに御木本が、
同時にキスを仕掛けてきた。
「御木本じゃない。崇と呼べ。そう命じた筈だ」
「私を選ぶんだよ。お兄様命令だ」
「俺を選ばなければ……」
「私を選ばなければ……」
俺に詰め寄る二つの黒いオーラ。
聞きたくない。
聞きたくないけれど~
俺はどうなる?
「「お仕置きだ」」
「………………お仕置き、って~?」
「お前を」
「君を」
「「犯す!」」
聞かなければ良かったー♠
***
三上を選べば、三上に抱かれて御木本に犯される……①
御木本を選べば、御木本に抱かれて三上に犯される……②
①②より、二人に抱かれて犯されるのは明白である。
ゆえに、これは3Pといえる
***
「「∴藍樹≡淫乱〔よって藍樹は淫乱と合同である〕」」
「やかましいわー!!」
俺の未来はどっちだ?
不意に屈強な腕に抱きすくめられた。
「お兄様を選べば、ご褒美に私の名前を教えてあげよう」
《fin》
私の名前は………
藍樹、お前にだけ教えるよ。
お前だけに呼んでほしいからね………
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