31 / 31

第31話【完】

嘘つき…… 俺は、お前の嘘を見抜けなかった。 だから別れたんだ。きっと…… αが三上だけだというのは嘘で…… 御木本も。 αの力を持っていた。 けれど御木本のαの力は、Ωの第二性を与える力ではない。 御木本の力は『死期を見る力』 御木本には、βに迫る死が見える。 (俺は、本来ならとっくにもう死んでいた) けれど。御木本は俺を死なせたくなくて…… 俺と別れて。 なのに突然、俺の前に現れて、俺をΩにしようとして…… 俺の運命を変えて、俺から死期を遠ざけようとしていたんだ。 ……そう三上が教えてくれた。 俺の死期が見えたから、御木本は現れた。暴走車から俺を守って、あいつは…… 「勝手に殺さないでもらおうか」 「御木本!」 「俺の運動神経を見くびるな。全治2週間の診断だが、入院は念のための検査入院だ」 「ヒャアっ」 「病院ではお静かに」 お前が! 俺の尻を撫でたから、変な声が出たんだっ 「変な声?気持ちいい声の間違いだろう」 「ナッ」 すりすり~ このエロ亭主が! ぺしぺしっ すりすり~ ぺしぺしぺしっ すりすりすり~ どんなに叩いても止める気がない。 「お前の尻も俺のものだ」 「俺のもの」 所有権は俺! 「マーキングしただろう?」 マーキング? 「俺の種を注いで、たっぷり♪」 「ギィヤアアァァァ~♠」 「マーキング済みの尻は俺のものだ」 すりすりすり~ 「ムギャアァァァ~♠」 「一つ訂正しておこう」 闇の火が双眸の中で静かに燃えた。 「俺はαではない」 Ω性を与える力を持たない俺は…… 「βだ」 唇が厚顔不遜に笑んだ。 「誰がなってやるものか。大嫌いな兄と同じαなんかに」 「それは私だって同じだよ。お前と同じαは心外だ」 「三上!」 御木本の腕の中で、舞い降りてきた唇が熱い。 抱擁されたままで俺は三上にキスされている。 「お前が選ぶんだよ」 彼岸花の花びらが降ってきた。 真っ赤な双眸に見つめられているのに、酸素が足りなくて、ぼうーとする。 俺は、なんの答えをもとめられているのだろう。 「お兄様か、弟か」 「お前の夫は、どちらがいい?」 「Ωでないお前に媚薬を塗って、発情期だと偽り、自分を運命の番に思い込ませた卑怯なβよりも、お前を本当に愛している誠実なαを選ぶだろう?」 「卑怯で狡猾な手段に染まっても、お前を奪いたい。素直なβが好きだろう?」 えっ、えっ、えぇぇぇーっ!! 俺は、俺はァァァー!! 「藍樹」 「藍樹」 チュッ♥ チュッ♥ 右の頬っぺたに三上が、 左の頬っぺたに御木本が、 同時にキスを仕掛けてきた。 「御木本じゃない。崇と呼べ。そう命じた筈だ」 「私を選ぶんだよ。お兄様命令だ」 「俺を選ばなければ……」 「私を選ばなければ……」 俺に詰め寄る二つの黒いオーラ。 聞きたくない。 聞きたくないけれど~ 俺はどうなる? 「「お仕置きだ」」 「………………お仕置き、って~?」 「お前を」 「君を」 「「犯す!」」 聞かなければ良かったー♠ *** 三上を選べば、三上に抱かれて御木本に犯される……① 御木本を選べば、御木本に抱かれて三上に犯される……② ①②より、二人に抱かれて犯されるのは明白である。 ゆえに、これは3Pといえる *** 「「∴藍樹≡淫乱〔よって藍樹は淫乱と合同である〕」」 「やかましいわー!!」 俺の未来はどっちだ? 不意に屈強な腕に抱きすくめられた。 「お兄様を選べば、ご褒美に私の名前を教えてあげよう」 《fin》 私の名前は……… 藍樹、お前にだけ教えるよ。 お前だけに呼んでほしいからね………

ともだちにシェアしよう!