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綿貫碧(わたぬき あおい)2-12

 まだ慣れきっていないため、痛い。そして、何よりも重い。正気かと思って苦情を言おうとすると、男が腰を動かし始めた。  クソッが。綿貫は心の中で毒づきながら、じっと目を瞑る。男の息が耳にかかり気持ち悪い。今まで、ケツに入れられて気持ち良いと思ったことはないが、今日は飛びきり気持ち悪い。  良くもこう、人の気持ちを無視して腰が振れるものだと思う。施設にいた時も、今以上のことをされたが、それでも知った顔だからかある程度の情は存在していた。綿貫にとってはいらぬ気遣いであったが、彼等は綿貫を気持ち良くしようという気もあったようだった。  しかし豚はそんな気遣いもない。オナホだから仕方が無いか。そう思って、綿貫はじっと我慢をした。  豚はすぐに果てた。早漏で良かったと思っていると、豚はコンドームを外し、自分のペニスを擦り始めた。 「何やってんですか」  もう終わりだろうと綿貫が思っていると、豚がにやりと笑った。 「い、一時間だよ。まだまだ時間があるから、やらないと勿体ないじゃ無いか」  そんな話聞いていないと思ったが、豚はすぐにペニスを勃たせると、綿貫の体を仰向けにして足を広げさせ、綿貫の制止など構わずに挿入してきた。 「マジか……」  綿貫は再度目を瞑る。早くイケと思った。  結局その日、男は三回射精をすると、さっさと部屋を出て行った。綿貫はベッドの上でごろりと寝転がりながら、最悪な気分を味わっていた。  惨めだ。惨めで仕方が無い。これは三沢のせいだ。彼が最初に来なければ、こんなに惨めな気持ちになどならなかった。こういうものだと割り切れたはずだ。しかし、三沢に優しくされたせいで、中途半端に心が揺らいでしまった。彼のせいだ。もう、嫌だ。こんな気持ちになるのはご免だ。もう二度と、三沢の部屋になど行かないと、綿貫は強く思った。 「風呂、行こ」  体には男の匂いが染みついている気がして、気持ちが悪い。耳にかかった生暖かい息を思い出し、肩を動かした。  風呂に行くと、上級生が何人かいた。綿貫は開いている蛇口の前に座ると、シャワーを頭から浴びる。隣では、上級生らしき男がイソジンで、うがいを始めた。  男が吐き出した茶色の液体が飛び散る。汚ねぇなと思ってその顔見ると、男も気がついたのか綿貫の顔を見てきて、ニコリと笑った。 「使う?」 「え、いや、いいです。それより、飛び散ってます」 「あぁ、ごめん。喉が気持ち悪くて。綿貫君だっけ、君も気持ち悪くない? うがいする?」  イソジンを差し出してくる男に、綿貫は首を振った。 「いや、別に。風邪ですか」  男はそれに少し声を出して笑った。 「イラマしたから、消毒。喉も痛いし」          

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