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第21話

あれから時は過ぎた 颯の心の傷は少しずつ癒えていった。今はあの頃より余裕ができて笑顔こそ相変わらずないが雰囲気は柔らかくなっていた。 別れてすぐの色気は少しだけ軽減されたようだ。 あの直後は散々だった。元々言い寄る奴は多かったがあいつと付き合ってるときはどこか見えない壁があって校内でおかしな行動を取るものは少なかったのだがあの後は校内でも連れ込まれることも増えていた。 まぁ。簡単な護身術はうちの道場で学んでいたから同じ年代の子ならどうにかなっていた ただ教師の時は厄介だった。俺の友人たちが逐一教えてくれて何度か助けにいった。 幸い全て未遂に終わってはいるが颯の精神面は大丈夫なのだろうか?なんて心配したことも一度や二度ではない。ただ颯は元々切り替えは早い。深い傷にはならなかったようだ 気付けば俺たちは中学を卒業し、高校生になっていた。 そこでまた苦しい生活が始まった。 颯に…新たに好きな人ができたのだ。 相手は新入生代表挨拶をした奴。背はだいたい颯くらい。立ち姿はとても凛としていてどこぞの王子のような人。 聞き取りやすい澄んだ声。柔らかい笑顔…。 名前は 「新入生代表。雪輪 睦月」 「…雪輪 睦月…」 俺たちは同じクラスになった。名字も同じま行なので出席番号も前後だった。だから聞き逃さなかった…瞳に光を宿し幸せそうに名前を呟いたこと。 「焔…」 教室に戻ると颯が話しかけてきた 「俺…雪輪くんに…一目惚れしたようです」 聞きたくなかった…でも…それが現実 「うまくいくといいな」 思ってもいないことを平静を装って呟いた。 雪輪は隣のクラスだった。挨拶をしたからなのか彼はあっという間に有名になっていた。 告白される現場に遭遇したことも何度かある。 「俺…がんばる!」 颯は高校から一人称は僕から俺に変わってた。特に意味はないらしいが何だか聞きなれるまで時間はかかった。 雪輪はあまり周りに関心を持つ様子は見えなかった。ただいつも同じ奴と一緒にいた。 相手は颯とまた違う種類の守ってやりたくなるタイプの奴だった。 本人は無自覚のようだがかなり可愛らしい顔をしているしいつも笑顔なので近寄りやすい。 可愛いだけじゃなくどこか色気もあって目を引く人物だった。 「雪輪くんはあまり周りに興味はないようです…だから…嫌でも目にはいるよう彼と競える可能性のある勉強を頑張ろうと思うので協力してください」 テストの順位を張り出される学校なので常にトップである雪輪に目にかけてもらうためにはそれが一番なのだろうと颯は判断したようだ

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