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第55話

「会長」 「あ?あぁ。お前か…」 いつもどこか余裕のある雪割。だが…颯の名前すら呼べないほどにショックを受けているのか…本人は無自覚のようだが。颯は一瞬目を伏せたがすぐにいつもの颯に戻って真っ直ぐ雪割を見据えていった 「今日の分は俺がやっておきます。だから行って下さい」 「いや…でも…」 「行って下さい」 結局全員に詰め寄られた雪割は渋々中の元へ…向かおうとしたのだが…でも… 「俺…あいつのこと…何も知らない…行けねぇし…」 虚しく声は消えていく。 「くそっ…何で…」 何でもっと早くに中の変化に気付かなかったのか…連絡来なくなって何で見付けようとしなかったのか… きっとそんな風に今雪割は自分を攻めてると思う 俺たちも中の家や連絡先はわからない。そのとき幸三郎がやって来た 「雪割先輩…」 「…幸三郎…」 「先輩…中の事…」 「中は…俺の中で後輩の一人でしかない…でもな、一度知り合いになれたんだ…俺はこれでも生徒会長。言ってくれれば助けてやれたのに…何で…お前ら…」 「一番は…やっぱり貴方にあの姿を見せたくなかったから…でも…それだけじゃないと思います…僕を…守るためだと…思います… 多分…中が貴方を頼れば…助けを求めてしまえば僕がもっと酷い目にあってたから…だから…先輩…お願いします…中を助けて…中を抱き締めてあげて…中は汚くないって伝えてあげて…お願いします…全て僕のせいなのに…ごめんなさい…ごめ…な…さいっ…」 声をつまらせながらでも必死で訴えかける姿に雪割は顔をあげた。 「中の家に連れていってくれるか?」 「はいっ…」 涙目になりながら何度も首肯く幸三郎。それをどこか懐かしそうに見つめる雪割。きっと今雪割の中で水無月への想いが昇華されたのだと思えた。

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