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第54話
教室へ戻り叫ぶ
「睦月!!!」
「あ?何?そんなに慌てて」
「中くんが…」
「だから何?」
「一先ずこいよ!!」
雪割の手を引き走り出す。
「何なんだよ!意味わかんねぇ!」
雪割は戸惑いながらも遅れずついてきた。早く…早く…中を抱き締めてやってほしい…
中に入ると虚ろだった中が目を見開き雪割を見つけ自身を抱きしめ呟いた
「やだ…見ないで…見ないで下さい…」
中心にいたのは全裸の中。その奥にはがたがたと震える幸三郎がいた。
「お前ら…何が…取り敢えず保健室。誰か教師呼んできて」
今度は引田が走り出ていった。雪割は中に向き合った
「中。何があった?」
「ごめんなさい。僕のせいです」
口を開いたのは幸三郎だった
話によると最後に教室に来た日の放課後のこと幸三郎と交際している敦夢という奴が中に対して嫉妬に狂い、その日から敦夢の友人に無理矢理に体を拓かせていたそうだ。中は酷く怯えていて体中傷だらけ。顔には見たところ掠り傷一つない。だから誰もこの事に気付いていなかったようだ。
今奥に縛られ倒れているきれいな顔をした奴が主犯の敦夢なのだということはすぐにわかった。そしてこの事をとても後悔していることも…
中と幸三郎、そして敦夢の3人は小学生からの同級生だそうで元々敦夢は嫉妬深い奴だったらしい。
幸三郎から話を聞き終える頃になっても二人の震えは止まってくれない。話が終わったころ教師がたどり着いた。担任の三國と保健医の伊澄だった。引田は教室にいるであろう水無月たちに中が見付かったこと、それと簡単に状況を話すため教室へ戻った
三國に3人を託すため雪割が苦しそうに言う
「先生。きちんとした処分をお願いします」
「わかった」
生徒指導の教師である三國に男たちは連れていかれた。
伊澄はここで中と幸三郎の手当てをした。
「霜月くん。帰れそう?俺が送ろうか?」
「先生。お願いします」
雪割が固い声で伊澄に言った
「先輩…」
「何?坂本くん」
雪割は幸三郎のことを冷たい声で呼んだ。
「…中の側にいてくれませんか?」
今にも泣き出しそうな顔で幸三郎が言うのだけれど…。
「悪いけど俺まだやること残っているから。気を付けて帰るんだよ」
二人の方を見ることもなく雪割は二人に背を向け立ち去った。
見ていられなかったのだろう。傷付いた中の姿を…
その背中を追うように俺たちもそこから離れた。
教室へ戻るとそこには引田の他に水無月、雛菊。そして颯がいた
「睦月!!」
「美空?まだ帰ってなかったの?」
「中くんのこと聞いた…側にいてあげなよ」
水無月が泣きそうな顔で言うけれどその水無月の顔もみないで雪割が答える。
「何で俺がいないとならない?」
「それは…」
「俺とあいつはなんの関係もねぇだろ。お前みたいに幼馴染みでもなんでもないんだし。俺が側にいてやる義理はねぇ。だいたい幸三郎がいるからいいだろ」
「むーくんっ!!本当にそう思ってるの?そんなに…色が変わるまで拳を握りしめてるくせに!!早く行きなさい!!」
「俺が側にいればかえって傷付く…あいつは自分を俺に見て欲しくないって言ってた…だから…」
「むーくんのばかぁ!!」
「睦月!!いい加減にしなよ!そんなに逃げないでよ。怖いんでしょ?好きになること」
「…」
「ねぇ。睦月…中くんは今お前に抱き締めて欲しいって…そう思ってるんじゃないかな?確かにお前はまだ中くんをそういう目では見てないかもしんない。でもさ…睦月気付いてないでしょ?中くんが来なくなって元気なくなったこと…」
「は?そんなこと…」
「あるよ。ため息増えた…食も細くなった。何年一緒にいると思ってるの?そんなことわかってるよ?ねぇ。睦月。今は付き合うとかそんなん考えなくていい。でも今中くんにはお前が必要だよ。」
「俺には仕事がある。だから…行かない」
3人で言い合う姿をただ黙って見ていた颯が意を決して一歩踏み出した。
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