57 / 124

第57話

その夜雛菊から連絡が来た。 『ほーくん。今からおうちにお邪魔してもいい?弥生ちゃんと』 『別に構わないが場所わかるのか?』 『地図送って。』 それからしばらくして雛菊が現れた。初めて颯以外の奴を家に呼んだものだから家族は驚いて。でも弥生先輩を見て押し黙る 「あなたは…」 「ご無沙汰しています。昌子さん。こんな時間に突然押し掛けてしまって申し訳ありません」 お手本のような挨拶と礼をして弥生先輩が微笑んだ すごい…やはりこの人… 実は俺の母親が勤めているのは弥生先輩の父親が経営しているところだ。 「こんなところにわざわざ足を運んでいただいて…」 「昌子さん。今はプライベートです。そんなに畏まらないでくださいよ。ね?これ。昌子さんが好きなお菓子です。いつも俺に下さいましたよね。だから俺もこれ大好きなんです。よかったらどうぞ」 「ありがとう」 「ふふ…以前は俺のことも自分の子供のように可愛がってくれたのにな。畏まられちゃうと悲しいです。」 「あ。ごめんね」 「いいえ。お邪魔します」 「はじめまして。昌子さん。雛菊 よもぎといいます。焔くんとはクラスメイトで仲良くしてもらってるんです。」 「そう。狭いうちだけどゆっくりしていってね」 緊張を解いた母親がやっと笑顔を見せた 部屋に招くと物珍しそうに見渡す二人 「狭いから驚いた?」 「男の子の部屋って感じで好き!!」 にこにこと雛菊がいうと弥生先輩が雛菊を抱き寄せた 「好きとか言わないでよぉ!!よもぉ!」 さっきの人とは別人だ。こっちの方が見覚えがある。 「久しぶりだねぇ!焔くん!」 「昔はよく遊んでましたもんね。颯もいっしょに」 「最近相手してくれないんだもん!俺寂しかったしぃ」 「大学と家の仕事で忙しい先輩に声かけられませんよ」 「そんなのいいのにぃ!」 「取り合えず煩いです。てきとーに座ってください。あんたたちの家みたいにでかくはないから息苦しいかもですけど」 「こんな部屋憧れだねぇ」 「あぁ。そうですか」 「焔。ごめん。開けてくれる?両手塞がってて」 母親が飲み物とお菓子を持ってきてくれた。 「さっきはごめんね!弥生くん。あまりにも久しぶりですっかりいい男になってたからドキドキしちゃった」 「あははっ!会社で毎日のように会ってるのに!」 「やっぱり仕事とプライベートは違うわよ。見違えちゃったわ!よもぎくんは実は初めてじゃないのよ?」 「え?そうなの?」 「えぇ。とても小さいころ焔とよく遊ばせてもらったの。実はお母様と私同級生なのよ。お互い忙しくなっちゃってなかなか会いに行けなかったけどお手紙のやり取りはしてたのよ」 「そっかぁ!ごめんね!俺わかんなくて」 「いいのよ。じゃあね」 母親の気配が消えて雛菊が珍しく真面目な顔になる 「ねぇ。ほーくん」 「…颯のことだろ?お察しの通りだよ。俺は昔からあいつが好きだけど」 「…苦しい?」 「そりゃーな。でも俺がこの位置にいるって決めたから。心配させてごめんな」 「ほーくん。相談する人は?」 「滋野にははなしてあるよ。でも相談も何もねぇよ。これ以上の関係になるつもりはないから。だから頼むから颯には余計なことを言わないでくれ。颯のことわかるだろ?」 「…やだ」 「は?」

ともだちにシェアしよう!