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第123話

「俺ももう帰れるみたいです。大丈夫ですよ」 子供の近くに行き目線を合わせるため膝をつく 「痛いとこはないか?」 「うん。痛くない」 「良かった。」 「お兄ちゃんも痛くない?ごめんね」 「痛くないよ。大丈夫。お母さんから離れたらダメだぞ」 「うん!」 「またな」 頭をくしゃくしゃと撫でるとニコリと笑う。 やっぱり子供は可愛いと思う… 去っていく後ろ姿を見ながら思った。 「ほーくん!!」 「え?」 呼ばれてみるとそうちゃんが涙目でこちらをきっと睨んでいた 「そうちゃん?おいで」 さっきのが嘘みたいににこーっと笑って手を伸ばしてくる 「ヤキモチ?そうくん」 「ダメだよぉ。焔は俺のだからね」 颯が笑いながらそう言う。そうちゃんはわかってるのかわかってないのかニコニコ手を伸ばしていた。 「みんなに話があります」 颯が切り出す。 「焔が記憶を…取り戻しました…」 さっきまで笑ってたのに今度は泣いて…忙しいことだが嬉しい そうちゃんを抱く俺の腰に巻き付く颯。 「よかった…」 母は夢から覚めたみたいに目を見開いてはらはらと涙を流した 「よかったな。颯くん。焔くん」 見惚れる爽やかな笑顔で克哉さんが言う えみりさんも泣いてくれた。こんなにみんなに喜ばれるのなら思い出せてよかった。 「父さん。母さん。知ってると思うけど俺はずっと颯を想っていた。これからもそれは変わらない…親不孝かもしれないが俺たちは子供が持てないと思う。孫の顔は見せてやれないと思う…でも…俺たちが共に生きることを許してくれないか?」 「当然でしょ。応援するわ。やっと想いが届いたのだから…幸せにならなきゃ許さないからね」 最後は皆で笑ってお世話になった先生たちにお礼を言って帰路に着いた 自宅に戻ると仕事から戻ったばかりの頼さんとアメリアさんが待っていてくれて記憶のことを伝えたら頼さんは大はしゃぎだ。 「よーし!!リアチャン!!今日はみんなでお祝い!ごちそうにしよぉ!!」 「はい。昌子さん家でお手伝いしてもらえます?」 「いいわよ。大きなキッチンで料理を出来るなんて最高!」 少女のようにはしゃぐ母達を優しく見つめる父たちがいた。 俺たちの物語はこれからまた新章に突入する。 これから先何が待っているかはわからないがきっと一緒なら乗り越えていけると思うから… ねぇ…この想いは届きましたか? 颯を見つめると笑い返してくれる。こんな些細な一つ一つのことも大切にしていこう… 颯を抱き締めてそう誓った fin.

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