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第10話
「何が……あった、のかな?」
僕は恐る恐る口を開いた。床に四つん這いになっている松本の手を、小林がぐいぐいと踏みつけている。
「身の程をわきまえてないヤツに説教してただけ。使えない人間が俺の下にいる必要はない」
「あ……とういうと?」
「自分の仕事をこなせず、他人に押し付けて早々に退社。酒場で弁護士の肩書をつかって女を引っかけてるようなクズにここにいる資格はねえって教えてあげてんの」
「あーー、とりあえず……手を踏んでる足を退かそうか、小林?」
「なんで? こいつに手が必要? 先輩の頭にあたるようにファイルを落として楽しむようなヤツに手はいらねえよ。そもそも仕事のために手なんて使わねえんだろうしな?」
くくくっと怒りに満ちた笑みで声をあげた。
こうなった小林をどう止めるんだ? 僕はやり方なんて知らないよ?
「いやいやいや……使うから。仕事以外にも手は大切だから。まずは、小林は自分のデスクに座って。で、松本はこっちのソファに座ろうか」
「先輩、そいつの味方すんの?」
「敵とか味方とかの話じゃない。松本の仕事を僕は手伝ったよ。至急だって付箋が貼ってあっただろ? 松本は他に仕事を掛け持ちしているから、至急案件だったのを僕がやった。だからこの件に関して、松本を責める必要ない。必要な資料はここにあるだろ? 必要ならもっと過去のデータを探してくるけど?」
「……ちっ。わかったよ。そういうことにしておく……が、次やったら、いいな?」
「小林! そういう脅しはよくない」
「松本、出ていけ。先輩は残って」
ソファに座っていた松本が勢いよく立ち上がると、深々とお辞儀をして踏まれた手を抑えながらオフィスを出ていった。
「あいつは……本当に使えないんだ。味方しないで」
「知ってる。データの集め方が甘いから。これは経験を積むしかないよ。僕があの子たちよりも仕事が早いのは、実務経験があるからだ。案件の内容で、どこをどう調べればいいかの経験値が違うだけ。怒るだけじゃ、彼らの経験値は増えないよ。脅して得られる情報は少ないんだから」
「甘いよ、先輩は」
「……それもわかってる。じゃなきゃ、僕は今頃、父の手伝いをしているはずだから。僕は小林みたいな仕事はできない。でも小林を尊敬してる。恰好いいと思う。憧れてるよ」
「ちょ、ちょっと待って、先輩! ……これ以上、俺を褒めないで」
「え?」
「下半身が限界」
「はああ?」
小林の頬がほんのり赤くなり、そっぽを向かれた。
「先輩、舐めて」
「なっ……できるわけないだろっ。ガラス張りの部屋で、外から丸見えなんだぞ」
「早くこっち」
今ならだれも見てないから、と腕を掴まれてデスクの下に引きずり込まれた。
「ばかっ。これ……美鈴さんが聞いて……」
「いいから。早くっ、咥えて」
「ちょ……んぅ!」
椅子に座ったまま小林の熱を無理やり口に入れられた。すっかり大きくなっている男根は僕の口の中で、さらに熱く大きくなる。
なんで……こんな。秘書の美鈴さんに室内を盗聴されてるって知ってるのに!
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