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第18話
―豊side―
「意外と早かったな。まだ時間がかかると思って油断してた」
「……そのようだな。ガウン姿とは」
玄関には道元坂以外にも、昔の友人が立っていた。
「智まで。駆り出されたのか?」
「違う。恵の秘書に見つかって、引っ張り出された。まあ……同じ獲物だからいいけど」
杉本智 が不満そうに頬を膨らませる。懐かしい顔ぶれに思わず、昔の自分にかえりそうになるが、喉を鳴らして気を引き締めた。
「二人ともどうぞ。椅子は一つしかねえけど」
「相変わらずなんもない家だな」
さくさくと智が中に入っていく。
「お前も大して家にモノを置いてないだろ」
「まあ……そうだけど。豊のシャツ、一枚頂戴。汗びっしょで気持ち悪いんだよ。長時間の張り込みは疲れる。クローゼットここだろ?」
「あ……待て! そこは……」
俺が引き留める間もなく、Tシャツを脱いだ智がドアを大きく開けた。ドアの前にはパジャマ姿のマヤの姿があった。
「……え?」
「あ……」
マヤと、上半身裸の智が顔を見合わせる。マヤの視線が下に行き、腰のところで止まるとぴくっと眉が動いた。
「豊、だれ、こいつ」
「……刺青……同じの……」
マヤが信じられないものを見るかのように、俺に目を向けた。
これは……勘違いする、よな?
「マヤ、こいつは探偵の杉本智。俺の昔からの知り合い。智、この人は俺の恋人、小野寺真弥」
俺は二人の間に入ると、慌てて紹介をした。『恋人』と言えば、マヤは安心するかと思ったが……いまだに俺を見る目が怖い。
「ちゃんと説明しておかなかったお前が悪い」
俺たちの後ろで足を止めた道元坂がフッと笑うと、奥までさっさと入っていく。一つしかない椅子に腰を下ろすと、煙草を吸い始めた。
「あ……道元坂さんまで?」
どういうこと、と言わんばかりの顔をするマヤに、「へえ」と智が肩を抱いた。
「豊に恋人……意外だわ。しかも小野寺議員の次男坊かよ」
「智、やめろ。触るな」
智の腕の中に入ったマヤの腕を掴んで、俺の胸の中に閉じ込めた。いくら旧知の仲と言えども、俺以外の男の腕の中にマヤは入れたくない。
「あの……小林と同じ、刺青……」
マヤが智の左腰についている刺青に視線を落とした。
「ああ? これ? 片翼の刺青。誓いの証。施設を出るときに、生きる道が違えども、それぞれの道で恵を守って行こうっていう徴だな」
智が刺青に触りながら説明をする。
「施設?」
「ああ? あれ? 言ってないの、豊。……俺ら全員、同じ施設出身者。本来なら、俺も豊もこんな贅沢な暮らしなんて出来ない人間だったけど……恵のおかけでこうして生きてる」
「……そう、だな」
ゴホンっと奥に座っている道元坂が喉を鳴らした。振り返ると、吸い終わった煙草を携帯灰皿に入れてこっちを見ていた。
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