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第23話

―真弥side― 「新たな門出に、乾杯!」と麗香さんが、僕の新しいオフィスでシャンパンをご馳走してくれた。  部屋に、美鈴さんと小林もいる。僕は、晴れてパートナーに昇格した。とっくに就業時間が過ぎていて、事務所には僕たち四人しか残ってない。  佐藤さんが自主退職という形で辞め、離婚もしたらしい。多数の浮気発覚で、多額の慰謝料が発生したって聞いた。麗香さんと小林が担当して、佐藤はぐうの音も出せなかったとか。 「こんなに広い部屋を僕一人で使っていいんですか?」 「ええ。誰かさんが、自分のオフィスから貴方が見えないと嫌なんですって。おかげでパートナーの大移動よ。もうーー、ほんと迷惑っ」 「そのうち監視カメラもつけろって言いだしそうよ」 「ああ、それ……いいな。やりたい」  小林の乗り気な反応に、麗香さんの頬が怒りで震えた。 「あのね……そういうのストーカーっていうの。わかってる?」 「先輩が受け入れてくれるから、ストーカーじゃない」 「カメラはちょっと……」  僕は苦笑した。この部屋割りも、小林から見える位置って……恥ずかしいんだけど。 「あー、やだやだ。小野寺、ちゃんと首輪をつけておいてよ。暴走されんの、嫌だから」 「……はい」  なんで僕が怒られるんだろう? 「じゃあ、私……あがりますね?」 「私も。美鈴、美味しくてイケメンがいるバーに行こう?」  女性二人は、腕を組みながら次にいく店の話をしながらエレベータへと歩いていった。  僕は二人の背中を見送ってから、小林に視線を向けた。 「ありがとう。やり方はちょっと……アレだけど。嬉しかった」 「自分のためにやっただけ。俺が生ぬるいやり方が嫌いだから。なあ、今夜はいいだろ? 傷……治ったし」 「あ、うん。でも……家で、だよ?」 「え? ここは?」 「だめ! オフィスで盛るから、ああいったことになったんだよ? 反省してる?」 「……家までお預け?」 「当たり前。車で十分のところだろ?」 「先輩、自転車だろ」 「出勤時間がそもそも違うからだろ?」  ムスッとした顔で、小林がソファに座ると足を組んだ。僕も隣に座ると、肩に頭を預ける。 「朝、僕を送ってくれる? そしたら僕も車で帰れるから」 「……わかった。一緒に帰ろう」  ぎゅっと手を繋ぎ合うと、チュッとキスをする。軽い触れ合うだけのキスだけど、愛情が伝わってきた。 「マヤ、ほら……寝ないで」  久しぶりのセックスは、小林の暴れっぷりすごくて。ずっと僕の中に入りっぱなしだ。オフィスの引っ越しで、ただでさえ身体の疲労が激しいというのに。意識が飛びそうになる僕の尻を叩いて、起こしてくる。 「な……寝ないと。明日仕事……んぅ、あっ……だめ……それ、イクっ」 「ここ? もっと突くよ」  後ろから激しく突かれると僕は、シーツをぎゅっと掴んで世界を煌めかした。足の先まで痙攣すると、薄い液体が微かに出ただけだった。  ばたんっと倒れ込んで枕に顔を埋める。  もう……だめ。無理だから。  勃たないし、出ない……。 「小林、もう……ほんとにやだ。寝かせてえ……」 「さすがに俺も……出ない」 「やり過ぎだろ」 「久しぶりだから」  嬉しそうに小林は言うと、ベッドに横になる。僕に絡み付くように抱き着くと、キスを求めてきた。  ちゅっと音をたてて唇を重ねる。 「マヤ、好きだよ」 「……僕も、小林が好き」 「今度は、麗香さんじゃなくて……俺に言ってよ。ああいうの……後で知るのは嫌だから」 「……ん、わかった。ごめん」 「謝らないで。俺は、離れないから。マヤしか愛せないから」  ずっと、小林の傍にーー僕も居たいよ。  愛してる、豊……。 ー了ー ありがとうございました。

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