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神崎と一緒に近所の公園へと逃げる。
「向井…… 大丈夫?」
「……あ、ああ」
「……いつから?」
「え?」
「いつから維弦に……」
「あ、いや、全然……」
「ぜ、全然なんでも、ないんだ。 その、今日は、たまたま……」
「……維弦が迷惑かけてごめん」
「い、いや……」
「アイツ、昔からいじめっこ気質なんだ。
でも、悪いヤツ、じゃない、と、思う……たぶん……
ああ、でも、自信ない……悪いヤツ、なのかなぁ……」
神崎は目を伏せぎみに、静かに言葉を続ける。
「俺は維弦と一緒に居ると楽しいし、幼馴染みだし、維弦のこと、親友だと思ってる。
でも、維弦は……」
「あの、助けてくれてありがとう……俺、帰るよ」
俺はそれ以上聞きたくなくて、神崎の言葉を遮った。
「送ってく」
「いや、大丈夫」
「でも……」
「……一人になりたいんだ」
「……そうか」
家に帰ろうか迷ったが、俺は片桐の事がどうしても気になった。
だから神崎と別れたあと、すぐに片桐と別れた場所へ戻った。
片桐はすぐに見つかった。
俺と別れた時のままの場所で、ぼうっと立ち尽くしていた。
「……片桐」
「………………っ!」
声をかければすぐに片桐が、俺を見る。
「お、お前の……
お前のせいで、嫌われちゃったじゃないかあああああ!!!!」
「あぐっ!?」
顔面に衝撃が走って、脳が揺さぶられる。
一瞬何が起こったか分からなかったが、頬が痛くなって、それで殴られたのだと気付いた。
バランスを崩して、地面に転がるように倒れる。
「お前のせいだ! 全部お前が悪い!!」
「…………っ、ご、ごめん……」
「死ね!!」
「うぐっ……」
片桐は、倒れたままの俺に追い打ちをかけるように蹴りを入れて来た。
片桐は完全に逆上していて、このまま殺されるのではないかと思うくらいだった。
でも、片桐は蹴りを入れてすぐに俺に背中を向けた。
そして、そのまま何処かへ走り去って行ってしまった。
「……あーあ、大丈夫?」
側に居たシムカという男に声をかけられる。
この人、まだ居たのか……。
片桐と何か話していたのかな。
「片桐くん、だっけ…… 色々と凄い子だね。
向井くん、戻って来たけど……
今から君を無理やり連れて行くのは気が引けるね。
責任は片桐くんに取らせよう。
あの子、ちょっと調子に乗ってるみたいだから」
嫌な予感がするが、俺は何も言えなかった。
シムカという男は腹の底が知れない感じがして、怖かった。
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