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第18話
でも、それでなんで俺?
「……そうか、わかったぞ。カッチを脅して真由ちゃんに近付こうにもカッチはブラッドフォグ出すからそうもいかない。だから見るからに非力な俺を人質にしてカッチに真由ちゃんを連れて来させようって魂胆だな!」
「クククッ、残念だがその推理は間違っているよ、名探偵さん」
ピンク頭が芝居掛かった声で言った。
「え?違うの?」
聞き返したらやっぱり芝居っぽくデカイ溜め息をつかれた。
「これだからパンピーは……。そこは『何ィッ!?』とか『い、一体それは……!』とか『俺の推理は完璧なはずだ!』とかいろいろあんでしょ、いろいろ」
「そっか。ごめん。じゃあもう1回お願いします」
「よし。……クククッ、残念だがその推理は間違っているよ、名探偵さん」
「イ、イッタイソレハー!」
「ああ、うん……努力は認める」
「え!?何がダメだった!?」
「演技力」
「マジで!?」
俺的には渾身の演技だったんだけど!
「尾藤ってノリいいなぁっ」
ノーお面が声を上げて笑った。
そのノーお面に、
「尾藤君にして正解だったね、いろんな意味で」
水色頭が話し掛けた。
「いろんな意味ってどういう意味?」
聞こえちゃったから聞いてみたら、水色頭がビクッと肩を揺らして俺に顔を向けてくる。
そんなビビんなくても……。
「いや、あの……尾藤君って顔はカッコイイのにイケメンオーラ全然ないし……って、いい意味でだよ!?話しやすそうっていうか優しそうっていうかっ」
「地味で単純そうで気も弱そう?」
「うん、まあ。……って何それ!違うよ!誰に言われたんだよそんなこと!」
「この学校のアイドルに……」
惣田に言われたんだよ……。
あん時は嘘だっつってたけど、アイツ絶対本気でそう思ってる。
ああ見えてアイツってグラ並に根性据わってるし、俺のこともヘタレってわかってて好きんなったんだろうし。
……告白されたんだよなぁ俺。学校のアイドルに。
今思うとスゲェ嘘みたいな話だ。
アイドルっつっても男だけど。
「学校のアイドルって、ミズキちゃん?」
ピンク頭に聞かれて、俺は小さく頷いた。
「……マジかよ……。ミズキちゃんって尾藤のこと好きだったんじゃないのかよ……」
なんでかピンク頭が頭を抱え出した。
「あーあ……この計画失敗じゃん……」
ノーお面もテーブルに立てた右手で額を押さえる。
水色頭も紫頭も肩を落として溜め息をついた。
……どういうこと?
「惣田がどうしたの?計画って?」
「……実はさ……」
ノーお面が額を押さえたままテーブルに向かって話し始めた。
「『二次元最高!三次元はクソだ!俺の嫁は二次元美少女だ!』っつってても、三次元の女に興味ねぇ訳じゃねぇんだ。でもココ男子校だし、外に出ても俺等全然モテねぇし。同世代の女は特にさ、オタクきんもーって目で俺等見て笑ってんだ。それで情けねんだけど三次元の女怖くなっちゃって……。だから……この計画で三次元の女に少しでも慣れて、いつかまゆたそとお話が出来たらなと……」
マユタソ召喚の儀って、今すぐやろうと思って言ってた訳じゃなかったのか。
でも真由ちゃんは確かに三次元の女だけど……小学生だぞ……?
……ロリコンには変わりねぇのかコイツ等。
いや、でも単に真由ちゃんと話したいだけみたいだしな。
てことは、まず小学生の女の子とお話をして、次に同年代の女子と……って、徐々に慣れていこうとしてるのかもしんねぇ。
じゃあ、今回コイツ等が企てた『三次元の女に慣れるための計画』ってなんなんだ?
「尾藤先輩いますか!!」
突如デカイ声を上げながら生物室に飛び込んできたのは……ちょっと待て。セーラー服の女の子!?
うっわ超可愛いっ。
と思ったら今度はベージュのカーディガンに紺のミニスカの制服ギャル!
足長ェーッ!
2人共スンゲェ美少女だっ。
どこの学校の子!?
つか女子が入ってきていいの!?
男子校だぞ!?
飢えた狼の巣窟だぞココ!
「尾藤先輩!なんにもされてませんよね!?大丈夫ですよね!?」
セーラー服の可愛い系美少女が俺の両腕を掴んで必死の形相で聞いてくる。
この子……マジで可愛いんだけど………………声が野郎だ。
つか、
「惣田!?」
「はいっ。尾藤先輩ボコられたくなかったら女装して助けにこいって書いてある手紙が下駄箱に入っててっ」
なるほど、それがお面達の『三次元の女に慣れるための計画』か……。
本物の女は無理だから、せめて女の格好した惣田と話でも出来たらと……?
どんだけ純情だよ可愛いなオイ!
なんだかちょっぴり優しい気持ちになってお面達を見たら、
「おうふっ、こ、これは……っ。けしからん……けしからんな……っ」
「萌えっ子とお姉様キターッ!」
「心が……!心がぴょんぴょんする……!」
「イチャイチャしてくんねぇかなぁっ。百合っぽいとこ見てぇーっ」
ダメだコイツ等。
完全に興奮しちゃってる。
でも惣田はともかく、この超美人なギャル誰だ?
「あ、姉ちゃんか。姉ちゃんいるっつってたもんな、惣田。けどお前の姉ちゃんスゲェ綺麗だなぁ」
ちらっと見て、惣田の姉ちゃんにニコッと微笑まれた瞬間、顔中の筋肉が一気に垂れ下がった気がした。
ヤバイです。恋しちゃいそうです。
本命はカッチだけど…………男はいくつも愛を持ってるんだよ!
「初めまして、尾藤です」
俺は背筋を伸ばして俺的に超紳士っぽい笑顔で挨拶した。
……ら、
「気付けよマサヤン!俺だよ俺!」
超美人が、超綺麗な女子高生が、大口を開けて豪快に笑い出した。
……この声、
「ミノリか!」
「はーいっ、ミノリでーすっ」
片手を振り上げて元気よくお返事する姿は育ち過ぎた幼稚園児みたいでした……。
いや、バカギャルか。
「なんでお前までそんな格好……」
「え?なんかミズキが女装しなきゃいけねぇって深刻な顔して言うから、じゃあ俺もーって。ミズキ1人じゃ危ねぇじゃん?女装したミズキ超可愛いし。ミズキの姉ちゃんマジ化粧の天才だよね。でも俺のが美人になり過ぎてビックリっつか俺綺麗じゃね?超綺麗じゃね?」
背が俺と同じくらいあるギャルにニコニコ笑顔で詰め寄られて、俺は半笑いになりながら後ずさった。
確かに超綺麗なんだけど……それより怖ェよお前っ。
しかもスゲェナルシスト……。
この顔じゃしょうがねぇか……。
つかミノリと惣田、いつから仲良し?
元々友達?
中学一緒だったとか?
世間って狭いな……。
「おい!ここに他校の女子生徒が入って……君達か!」
あー……マズイよ、学年主任だ。
女子じゃねぇけど他校の生徒が1人いんのは事実だ。
どうすっか……。
「先生っ、僕ですっ。1年の惣田瑞樹ですっ。紛らわしい格好でウロウロしてすみませんっ」
惣田がペコンと頭を下げると学年主任は目を丸くして、
「惣田!?そ、そうか。じゃあそっちは。そっちも仮装してるだけか?……女子にしか見えないが……」
学年主任の目がうっすら変態オヤジになってっけど上手く答えてくれ、ミノリ!
「え!?あ……2年の倉原明でーすっ」
ああ、まあ、似てるよ。兄弟だもんな。
でもお前……その嘘グラにバレたら間違いなく殺されるぞ……。
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