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第11話
夜が明けてきて、朝焼けがカーテン越しに見えた。
「イッテェ…」
田村は腰をさすりながら今井の差し出してくれた水を飲む。
「大丈夫?今日休みでよかったね」
涼しそうな顔をして今井が笑う。
まだ二人は裸のまま、ベッドに寝転がっている。
「…あのさ、どれが本当のお前なの?」
「どれも同じ『僕』だよ」
今井はそういうと、田村の髪を撫でる。
(ますます、コイツ面白い)
まさかの展開ではあったけれど。
これから先も見てみたい。
「あのさ、今更だけど…名前教えてよ」
髪を撫でていた手を止めて、今井が耳元で囁いた。
ちょうど田村も聞こうとしたところだったので、少し笑う。
「新一郎だよ。お前は?」
「信」
似たような名前だね、と笑い合った。
さて、今日一日どうする?と今井が悪戯っぽく言う。
まだまだ時間はたくさんある。
「ま、ヤルことは一つかな」
「第2ラウンド、だね」
月曜日からはいつものごとく、あの職場で経理業務を行う。何もなかったかのように。
今井は別の場所で、税務調査と言う名の宝島探しをしていく。
ただ、以前と違うのは週末。
駅前で待ち合わせして田村のお気に入り居酒屋で飲んだり、今井の手作り料理を肴に呑んだり。
食欲、睡眠欲、そして性欲を二人で満たしていく。
友人なのか、セフレなのか、恋人なのか。
それがはっきりするのはもう少し先の話。
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