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2《取り憑かれている》

しかし彼はなかなかついて来ない。 これでは深まった溝は到底埋められない… 意を決して、業務内で誘うことにする。 「東洞、今から飯行くぞ!」 「え、いや…僕はっ」 慌てる東洞に… 「これは上司命令だ!行くぞっ」 やや引き気味の東洞を無理やりラーメン屋に連れてくる。 ラーメン屋の個室に入り… 「ほら、奢りだ食え!」 「……ありがとう、ございます」 東洞は俯き加減に礼をいう… 水を飲み…ラーメンには手をつけようとはしない東洞を見ながら… 息をつき、本題に入る。 「お前、俺のことが怖いのか?」 「いえ、国近さんのことが…というか…」 そう言うと、視線を俺の左肩の上あたりに逸らす東洞… 「なんだ…」 その視線を追って振り返るが、そこには壁しかない。 「……」 「言いたいことがあるんだったら言えよ」 「たぶん、言っても信じないと思うんですけど…」 「…なんだ?いいから言えよ」 そう急かすと… 「国近さん、…取り憑かれてますよ」 「は?」 「霊に、取り憑かれてます」 「れいって、霊?」 「はい…ずっと居ますよ、そこに」 チラっと視線を壁に向けて平然と言う東洞。 「……お前、あほか?」 「ほら、信じない…」 「信じれるわけ無いだろう、幽霊なんか人間が作り出す想像のものなんだ!居てたまるか!」 かっとなり、勢いよく否定してしまう。 「……」 「あ、すまん…」 「いえ、僕帰ります、ご馳走さまでした」 東洞は急に立ち上がると頭を下げて走って帰ってしまった…。 「あ、東洞!」 「……」 食事も手をつけず…東洞は帰ってしまう。 残ったラーメンを見て溜息をつくしかなかった…。

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