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9《助けたい気持ち》

「ダメならまたその時頑張りましょう、僕にゆたかさんを降ろせたと仮定して、そのあと国近さんには頑張ってゆたかさんに呼びかけて、ゆたかさんの魂だけを僕から抜き出してください」 「な、そんなこと出来るのかよ」 「難しいと思います、地縛斬りも抵抗すると思いますけど、妖怪の方は、僕の身体の中に一時的に封じますので…」 「いや、お前そんなことして身体は…」 妖怪を身体に封じる? かなりヤバそうな行動だ。 「国近さん、ゆたかさんを助けたいんじゃないんですか?」 すると東洞は、あまり見せない厳しい目つきで話し出す。 「助けたいよ!」 「なら迷う必要はないでしょ、この方法しかないんです」 真剣な表情…。 「……分かった」 それに気圧され頷いてしまう。 「はい、完全にゆたかさんが僕の身体から完全に抜けたら、僕は妖怪を依り代に封印します」 俺の返事を確認したら、また表情を和らげる東洞… 説明を続ける。 「この時、俺は何をしたらいいんだ?」 「何も、と言いたいとこですがもし僕が意識を無くして暴れ出したら、殴ってでもいいんで覚醒させてくださいね」 「それ…お前…」 意識を失う…って、とてつもなく危険な状態じゃないのか… 「国近さん頼みますよ」 東洞は微笑みながら、そう念を押す。 「お、おう!」 何が起こるのか分からないが…出来ることは全てやる。 ゆたかを助ける為に… 「見たところ、取り憑かれて間もない為か、ゆたかさんと地縛斬りの融合はまだ薄いので、分離の可能性はまだあります」 「決行日は明日にしましょう、これ以上…地縛斬りがゆたかさんと融合を深め、国近さんの気を吸いとって強くならないうちに…」 「分かった、俺は思い出の品を持って行って、ゆたかを呼び出す役だな!」 確認しながら頷く。 「はい、お願いします、色々都合があるので、場所は僕の家でもいいですか?」 「あぁ、どこでも」 「よろしくお願いします」 「よろしく頼むな東洞」 普段は頼りない部下だが、この時ばかりは東洞の存在が心強く…有難く思えた。

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