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15《ありがとう》
「…ゆたか、俺…」
『辛くて苦しくて…寂しかったんだ…啓介にも嫌われたんだって…でも違った…今でも友達だよね』
「あぁ、友達だ…お前のこと、忘れたことはなかったから…」
『ありがとう…』
「ありがとうはこっちのセリフだ…」
『うん…逝く前に、話が出来て良かった…』
「行くって…どこへ」
『然るべき場所…啓介が助けてくれたから逝ける場所…先に行って待ってるから…』
そっと歩み寄る2人…
「ゆたか…」
近づいたゆたかを、離さないようぎゅっと抱きとめる。
『本当にありがとう…啓介…』
「っ…ゆたかッ!」
『………』
不意に力を失って、その場に倒れ込む…
「ゆたか!?」
慌てて支えながら座り込むが…
「ゆたかさんは、無事昇っていけましたよ…国近さん」
息をつきながら、答えるのは…
「…東洞か…お前、大丈夫か?」
東洞に戻ったその身体は…力無く横になったまま…
肩を引き寄せ膝に乗せ、聞いてしまう。
「ちょっと限界ですかね…あの、明日仕事行けないかもしれないです…」
言葉に力がない…
もともと細身の東洞、さらにやつれて見えて心配になる。
「バカやろ、仕事どころじゃないだろ、血を吐いたんだぞ!!」
「あの妖怪、かなり暴れてくれましたから…やっぱ妖怪を身体に留めるのはかなりキツかったですね」
苦笑いしながら話す東洞…
「妖怪封じたらどうなるか知らなかったのかよ」
「妖怪は、初めての試みでした…」
「ばかやろ、なんで言わなかったッお前、死んだらどうするんだ!」
「…死んだら、決められた場所へ逝くだけですよ」
そう、また平然と呟く東洞。
「バカ!まだ逝くな!若いくせになに言ってんだ…」
そんな生気のない顔で言われると堪らなく怖くなり…つい怒ってしまう。
「…ふ、貴方は面白いひとだ…」
そう笑うと…瞳を閉じてしまう。
「国近さんの…オーラ、心地いい…」
小さく囁いて、瞳を閉じてしまう。
「…おい、東洞!?」
「すみません…少し、休みます…国近さんは、気にせず、帰ってくださいね…」
「と、東洞??」
「………」
それきり言葉を発せず、ぐったりと昏睡するように眠りはじめた東洞。
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