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16《誰もいない》

「って帰れるかよ…こんなに血まみれになって…何か拭くものないのか?」 東洞は口の端やら袴の前やらに血が滴りシミになっている。 手で口の周りに着いた血を拭ってやるが、既に固まりかけていて、全部は拭いきれない… 「ていうか、家の人はいないのか?すみません!終わったんで誰か来ていただけませんかー?」 東洞を膝に乗せているので、座ったまま大声で呼んでみる…が、静まり返った屋敷には人の気配はない。 「……待ってろよ、東洞」 東洞を畳に横たえ… 「すみません!誰かー?」 屋敷の廊下を歩きながら、家人を探すが… 端から端まで歩き探すも誰もいない… 少し薄気味悪ささえ感じる屋敷の中… とりあえず台所にあったタオルだけ持って来て、広間に戻る。 「夕飯どきはとっくに過ぎているのに…誰1人いないのか、この家は…」 ボヤキながら…東洞を抱き寄せ濡れタオルで口の周りを拭いてやる… 昏睡しているのか…起きる気配はない。 「……こいつも、」 なんで、俺なんかの為にここまで出来るんだ? この能力のこと、最初はあんなにバカにした俺なんかに… 傷ついてまで… 「これは、ちょっとやそっとじゃ恩を返しきれないな…」 そう、眠り続ける霊媒師の青年の額を優しく撫でて呟くのだった…。

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