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21《非日常的な夜》

「はは、僕は慣れてますから、大丈夫です」 そう笑ってかわしながら、袴の上を脱ぎはじめる。 「……」 色白の肌に、長めの黒髪… ほっそりとした姿は、後ろから見ていると少女と見間違うほど綺麗に見える。 しかし気になったのはそれだけではなかった。 「お前、肩…」 東洞の右肩には3箇所ほど浅黒く焦げたような痕が… 「え?あ、これですか?刺青じゃないですよ、邪鬼が嫌う石を焼きつけているんです…邪気は右から入って左へ抜けて行くので…右肩に…」 「あ、ほらこっちのほうが凄いですよ」 そう言いながら東洞が振り向くと、ちょうど心臓の上辺りにも、何かの文字が黒く焼きつけてある… 色白の肌にはかなり映える焼版だ… 「ッ…これは、」 「こっちは身体につけた結界なんです」 「結界?」 東洞の話しは、慣れない専門用語が多くて度々首を傾げてしまう。 「霊媒体質の強い人は赤ちゃんの頃から色んなものを憑依させてしまうので、身体に結界をつけて悪いものを弾くようにしているんです」 その胸の結界に触れて…説明する東洞。    「……産まれてすぐ焼くのか?」 「はい、この結界を解いたり結んだりしながら霊を降ろしたりしているんです、普段結界を結んでいれば寝てるときとか無防備な時にも憑依されずに済むので結構大切なんですよ」 「…大変なんだな」 取り憑かれる危険を意識した生活なんかおくったことはない… 東洞には、俺の想像を超える苦労があるんだろう。 「正直…こんな家系に産まれたことを呪ったこともありましたけど…この力で救えるひともいるので…今回の国近さんみたいにね、だから今は受け止めてます」 「……東洞…」 そう、悟ったように話す、若いその姿をただ見つめるしかできなかった。 「あ、禊中は喋れないので、すみません、国近さんはお風呂入られてもいいですよ?」 「いや、帰るよ…邪魔しちゃ悪いからな…くれぐれも風邪引くなよ!今日は会社には欠勤伝えとくから」 「はーい、ありがとうございます」 東洞はもう一度振り返り、会釈をして礼を言う。 「……じゃな」 こうして、俺が体験した、非日常的事象は終わりを告げた…。 東洞とは出逢って一週間ほどだが…この夜の出来事は、それを超えてしまえるほど…濃厚で深く心に残る夜だった。

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