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28《温かい時間》

「いえ、作って持って来てくださる方がいるので…」 「そうなのか…その人には悪いが…、やってみるか、そこの台所のものは清めてあるのか?」 「え、はい」 「ここにあるもので俺が作り直しても大丈夫か?」 「えっ?」 「どうなんだ?」 「大丈夫です…けどいいんですか?」 「あぁ、そんな味気ないものが夕食じゃ元気はでないだろ、俺の料理の方がいくらかマシになる」 「ありがとうございます」 「少し待ってろよ」 台所にある調味料や、あまり内容の入っていない冷蔵庫内を吟味して、今作れるメニューを瞬時に考え作り始める。 「向こうで待ってろよ、毒なんか入れないから」 東洞はそばに立って様子を窺っている。 「いえ、作っていただいてるのに、休むわけには…あと貴重な料理する国近さんの姿を見ていたいです。…それに、近くにいたいから…」 最後にぽそっと囁く東洞。 「どーせオーラだろ?ったく…邪魔するなよ」 東洞にとって俺のオーラは良質な充電器か何かなんだろう。 「はい」 またニコッと笑う東洞。 1時間ほどして東洞用のメニューが完成する。 野菜中心だが、調理方法と味付けを工夫して、食欲を出させるため、見た目も美味そうに盛り付ける。 テーブルに並べ、余ったものは自分も弁当と一緒に食べることにする。 「国近さんすごいです、料理上手いんですね!」 ずっと調理を見学していた東洞は目を輝かせている。 「まあな、独身長いと色々身につくもんだ」 「僕、全然出来ないんで尊敬です」 「いや、まあ、お前の口に合うか分からないし…でも冷凍チンよりは幾分マシだろ」 「いただいていいですか?」 待ちきれない様子で、聞いて来る東洞。 「ああ、じゃ、食おうか」 笑いながら促してやる。 「はい!いただきまーす」 「…いただきます」 「うん、美味しい!…これも!」 嬉しそうに箸を進める東洞を見ると、作ってやった甲斐があったと思える。

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