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34《仕事が進まない》
「国近さん…」
「今日も1日長いんだ、そんな顔じゃ夜まで保たないぞ」
俺の言葉を聞いて、強張っていた東洞の表情が和らぐ…
「はい、おはようございます」
微笑み挨拶する。
「おー、おはよう、行くか」
「はい」
オフィスについて、デスクに座る。
担当する都合で東洞のデスクの隣に俺のデスクがある。
新人の東洞に割り振られた仕事はパソコンで、データチェックとデータの入力作業、決められた量を決められた時間内にやる。
それだけだ。
しかし、なかなか東洞は進まない。
今日も…
俺が自分の仕事に集中して暫く東洞から目を離していて…
ふと隣のデスクを見ると…
作業の手が止まり、東洞は何やらポソッと呟きながら、パソコンの画面の前を手で払う仕草をしている。
「東洞、どうした?」
「あ、いえ…」
呼びかけると、不思議な行動をやめた東洞だが…
「伝票合ってるんだろ?なら早く入力しろよ」
「はい…」
俺の言葉に打ち始めるが…
「おい、そこ、打つ場所間違ってるだろ…」
「あ、すみません…」
謝りながら苦笑いな東洞。
やはりパソコン画面の前を手で払っている。
「ん?画面に何かついてるか?」
ゴミでもついているのかと、東洞のパソコンを覗き込むが、特に何もついていない…
「……あの、画面が見えなくて…」
ポソッと小声で耳打ちしてくる。
「画面が?」
俺にはなんの変哲もないパソコン画面だが…
「今日、出社する道すがら…子どもの霊を拾って来てしまって…その子がイタズラで画面に張り付いてて…見えないんです…」
「えっ?今?」
「はい…家に帰ってから浄霊をしようと思ってたんですけど…なかなかおてんばで…大人しくしてくれなくて…」
困ったふうに首を傾げながら伝えてくる。
「…そうなのか、…つか、職場に霊を連れてくるなよ…」
子どもの霊がいるかと思うと少し困惑する。
「すみません…少し話をしたらついてきてしまって…」
「やれやれ」
「あの、少し休憩いいですか?このままじゃ仕事にならないので…トイレで浄霊してきます」
「え、大丈夫なのか?」
「個室でしますから大丈夫です」
「しかしなぁ…なら、何か手伝うことは?」
俺のを祓った時の印象が強いので1人でいかせるのは心配だ。
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