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33《辞めたくない》

翌朝。 朝の支度をしている東洞に… 優志が声をかける。 「おい、仕事はもう辞めろよ」 「辞めません」 「外に出たらお前が苦しむだけなんだぞ」 「……」 無言で首を横に振り…部屋を出ようとする。 「行くな」 「行きます、こんなところに閉じこもっていたら病気になる…僕は行きたいんです」 「……外と関わりを持って傷つくのはお前なんだぞ!」 「それでも…、ごめんなさい…優志さん」 優志の言葉を振り切り、仕事へ出て行く。 「チッ…」 舌打ちをしながらも… 「……いずれわかる時が来る…」 俺達が…普通の人間と、うまくやっていける訳はないんだからな… 最後には自分のもとへ戻ってくる。 尊は俺が居なけりゃ生きていけないんだ…。 昨日、東洞の家に行ったら、無粋な男が乱入してきて、追い返されてしまった… あの男は何者なのか… でも、東洞を守ろうとする姿勢は感じられた。 まあ、部外者は俺だった訳だから、仕方ないのかもしれないが… とりあえず、今日、東洞がちゃんと出勤してくるのかが心配だ。 辞めるとかなんとか…言ってたし… 新入早々、これ以上欠勤が続いたらそれこそ首が危うくなりかねない。 そんな心配をしながら職場前まで来ると… 「あ、東洞…」 入り口の前で佇んでいる姿は…東洞だった。 「あ、国近さん!」 俺に気づくと、東洞は急ぎ足で駆け寄ってきて… 「国近さん、昨日はごめんなさい」 いきなり頭を下げて来る。 「東洞…」 「せっかく来てくださったのに…僕…」 「東洞、頭あげろ!まずはおはようございますだろ」 ポンと、頭に手を乗せて…笑顔で言ってやる。

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