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第9話
朝のHRが終わると俺達は先生回収隊が持ってきたお菓子を食べる。
もちろん、1人1個。
しかし今回俺はその場で食べず鞄の中にしまった。
「あれ?食べないの?」
悟が聞いてくる。
「弟のおやつ」
「相変わらずの溺愛だな」
「可愛いからな」
キメ顔で言う俺に龍二は「きもっ」と零した。
龍二には絶対見せてやんねぇ。
「やっぱりいない」
悟がぼそっと言う。
「誰が?」
「転校生だよ。休み時間になると先生と同時に教室出ていく」
よく見てんな、と龍二が興味なさげに言う。
「気になんの?」
悟に聞いてみる。
「気になるというか。柊、いつも話してるでしょ?」
「話してるだけだけどな」
「何話してるのか気になるし、どうせ柊は教えてくれないし」
いつも聞いてくるが俺は世間話だ、と詳しい内容は話していない。
「向こうは忘れてるかもしれないけれど、僕あいつと小学校一緒だったから」
それは初耳だ。
「昔は仲良かったのに、もう一度話せたらなって」
「忘れたいことがあったんじゃねえやの?」
この無神経め。
龍二はいつも人の心を抉ってくる。
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