7 / 10
【VD会話文SS】1♡アキラ×葉璃 編
◇ ◇ ◇
1♡アキラ×葉璃 編
ドラマの撮影終わりを狙ってアキラさんを待ち伏せしていた俺は、両手で抱えるほどの大きな紙袋を抱いてドキドキと戦っている。
怪しげに地下駐車場の入り口に佇み、気配を殺す。
それでも幾人かのタレント等と遭遇し、暗がりに居た俺を見付けて「幽霊かと思った!」と驚かれた。
芸能界に入って一年、二年とその世界に馴染んできたせいで、知らず知らずのうちに気配の消し方を忘れているのかもしれない。
ちなみに連絡もせずに来たのは、待ち伏せしてでもサプライズで渡したかったからだ。
佇む場所からアキラさんの愛車であるS450(聖南に教えてもらった)は確認しているので、まだ局内に居るのは間違いない。
撮影の終わり予定時間も成田さんに聞いていて、それが多少伸びたところで構わない。
サプライズ前でドキドキしている俺が紙袋を抱え直したその時、入り口から目的の人物が溜め息を吐きながら出てきた。
「──あ、アキラさん!」
「えっ!? ハル!? ……一人?」
「はいっ!」
「どうしたんだよ、こんなとこで。俺の出待ちみたい」
「それです! 出待ちしてました!」
「あはは……っ、そうなんだ? どうした、またアイツが何かやらかしたとか?」
「いえ違いますよ! これ! これをアキラさんに渡そうと思って」
「……なに? てか車行こうか。すげぇ見られてる」
「あ、っ……すみません……っ」
〜アキラさんの愛車へ移動〜。。。"8-(*o・ω・)oテクテク
「これ俺に?」
「はいっ、受け取ってください!」
「ありがとな。……しかしデケェな。何入ってんだろ」
「今時間あるなら、開けてみてほしいですっ」
「あぁ、じゃあ開けてみる」
〜アキラさんプレゼントを開封中〜……(,,•﹏•,,)ドキドキ……
「え、……?」
「え?(*‘ω‘ *)?」
「ハル、……あの……ありがとう。ありがとうなんだけどさ、……んーと、……」
「バレンタインなので!」
「えっ? あー、……なるほど。それで俺にプレゼントを?」
「そうです! 日頃の感謝を込めて!」
「いや、めちゃめちゃニコニコなのマジで可愛いし、出待ちまでして渡してくれたのは嬉しいんだけど。俺にこのプレゼントを選んだ理由って聞いていい?」
「理由ですか? それは……アキラさんっぽいかなって!」
「えぇ? 俺ってデケェうさぎのぬいぐるみのイメージなのか!?」
「あ、そういう〝っぽい〟じゃなくて、アキラさんうさぎが好きでしょ?」
「……俺が? うさぎを? 可愛いとは思うけど……」
「だってアキラさん、仮装パーティーのとき不思議の国のアリスが好きだって……(´._.`)」
「あぁ! そういう事か! ハル、あの時うさぎの仮装してたよな!」
「なんか……すみません……戸惑わせちゃうもの贈って……」
「違う違う! ごめんなっ? そんな前のこと覚えててくれたとは思わなかったんだ! 嬉しいよ、理由聞いたらちゃんと俺っぽい!」
「う、嬉しい、ですか……?」
「もちろんだ! ハルがプレゼントしてくれたんだぞっ? めちゃめちゃ嬉しいに決まってんだろ! コイツにハルって名前付けて家の特等席に座らせとくよ! あぁ……そんなションボリしないでくれ、ハル」
「……( ´•ω•` )」
焦ってるアキラさんが、一メートル以上あるうさぎのぬいぐるみを後部座席に置いて、シートベルトまで嵌めた。
アキラさんが戸惑ってた原因は、なんで俺がこれを選んだのか分からなかっただけみたい。
「あー……ハルが来てくれて、プレゼントまでくれて、元気出たよ」
「……どうかしました?」
「今日さ、俺珍しくセリフ飛ばしちまって」
「え!? アキラさんがですか!?」
「そう。NG出さないで有名な〝アキラ〟が、今日はマジでダメな一日だった。ちょっと凹んでて、帰ったら酒飲んでふて寝しようと思ってたんだよ」
「そうだったんですか……」
「でも元気出たから、家飲みはやめてハルとメシ食って帰ろうと思うんだけど。セナには内緒で」
「えっ……聖南さんに内緒?」
「たまにはいいだろ、俺と二人でメシ食うくらい」
「まぁ……アキラさんなら、大丈夫だと思います。後々バレても、聖南さんはアキラさんには何も言えない、かも」
「だろ?」
ふっと笑ったアキラさんに連れられて、その夜は回らないお寿司をごちそうになった。
俺に元気付けられたからって。
プレゼントを渡しに来たのに、俺は結局ご飯を奢ってもらい、デザートまで食べさせてもらい、最後は家まで送ってもらって、あげく「ホワイトデー楽しみにしてろ」とお返しの予告までされてしまった。
俺は日頃の感謝を伝えたかっただけなんだけど、CROWNの長男役であるアキラさんは俺の何倍も上手だった。
ʜᴀᴘᴘʏ ᴠᴀʟᴇɴᴛɪɴᴇ ꪔ̤̮ ♡
♡アキラ×葉璃 編 終
ともだちにシェアしよう!