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「………。」  明け方、オーディオルームを片付けていた弓削は、頬をひくつかせた。  南側の部屋から璃音の啼き声が漏れていたので…。 「あ、あのエロ魔神、どれだけがっつく気よ!?」  昨夜、姿が見えなかった猫が椅子の上で憤慨している。 「まあまあ、今回は禁断症状絡みですので大目に見て差し上げては…?」 「じょ…っ、冗談じゃないワよっ!!  璃音ががっつかれる現場見せられたのよ!?  ワタシは単に、璃音が心配でついて行っただけなのにっ!!  ワタシの存在も忘れてあんなコト…っ!!」  猫は、昨夜璃音が龍嗣に美味しく食べられている現場に居合わせた。 (さすがに声をかけられなかったようで…。)  硬直したまま動けないでいたところ、バスルームから戻って来た璃音が再びがっつかれる現場も目撃する羽目になり。  ショックで打ちひしがれていたら血相を変えた弓削が駆け込んできて、慌てて別の部屋へと移動しようとした龍嗣に閉じ込められたのだ。  二人が抱き合った痕跡がありありと残る部屋に取り残され、弓削にも気づいてもらえず、傷心の猫。 「確かに…、災難でしたねぇ…」  苦笑いしながら片付けを続ける弓削。 「大体、あんなに激しく交尾してたのよ!?  璃音が足を引きずったり、歩けなくなる理由が良く判ったワよっ!!」  尻尾をぶんぶん振って、尚も憤慨する。 「微笑ましいプロポーズもご覧になりましたでしょう?  いかがでしたか?」 「まあ、エロ魔神なりに璃音を大事にしてるって判ったけど…。  でも、あんなのダメよ!!ダメダメ!!  璃音にあんな大きな体でのしかかるなんて…っ!!  トイ・プードルに、レトリバーかマスチフがのしかかるようなものよ!?  体格差も考えてないんじゃないのっ!?」  ぶふぅっ!!  実際に想像して、弓削は噴き出してしまった。 「よくまあピッタリな表現があるものですね…。  確かに、トイ・プードルとレトリバーと言えなくもないですし。  旦那様は着痩せして見えますが、結構筋肉がついてますし、肩幅もおありですからねえ…」 「信じらんないワ!!  璃音はね、純真無垢だったのよ!?  それを出逢って直ぐに食べるし、がっつくし…!!  どれだけエロ魔神なの、あの変態っ!!」  至極真面目な顔で断言しまくる猫に、弓削も言葉が出ない。  まあ、災難だった事は同情するのだが…。

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