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 瑠維が落ち着いてから、水上邸に移動した。  リビングで寛いでいると。 「うーっ、まだ痛ぇよ…」  痛む頬に保冷剤を当て、瑠維はむくれてみせた。 「お仕置きなんだから、少しは我慢しないとね?  本当は、月まで飛ぶくらいの勢いで殴ってやろうかなって思ったんだから。  弓削さんに感謝してね」  龍嗣が座るソファーの肘置きに腰を下ろし、璃音はクスクス笑う。 「う…っ」  居心地の悪さに身を縮めると、両側に座る弓削と小鳥遊が肩や背中を、ポンポンと叩いてくれた。 「ま、オイタが過ぎたからしょうがねえだろうな」 「確かに。  意趣返しに、ヤリ返されても文句は言えないですからね」  伴侶二人にまでバッサリ斬り捨てられ、瑠維は頬を膨らませる。 「そりゃ、文句も言えねえし、謝っても謝り切れねえしさ…」  唇を尖らせ下げた視線を上にずらすと、クスクス笑う璃音に目がいった。 「………」  背丈が伸び、瑠維を追い越してしまった璃音は、中学生だった時の面影を残しながらも優美な獣といった感じに見える。  手術室の中での心細げな表情が抜けてしまってからは、透明さと艶っぽさが同居する印象をうける程で。  だが。  幼い時から想い続けてきた、身を焦がすような狂おしさは感じない。  弓削と小鳥遊に愛されるようになり、彼への想いが違ってしまったからだろうか…。  複雑な思いのまま見つめていると、龍嗣が腕を回して華奢な体を引き寄せる。 「………っ?」  驚いて見上げる璃音を腕の中に包み込み、龍嗣は悪戯っぽい顔になった。 「どうしたの?  いきなり引っ張るからビックリしたよ?」 「仕方ないだろう?  質の悪い猫がジッと見てるんだから」 「「猫………?」」  四人が聞き返すと、龍嗣が真面目な表情になって尤もらしく呟く。 「ほら、ケダモノ2人に囲まれた、質の悪い野良猫がな」  ケダモノ2人…?  それぞれの視線が動き、集中したのは…。 「…………俺かよっ!?」 「「お前以外に誰がいるんだ?」」  弓削、小鳥遊、龍嗣の3人が同時に突っ込み、瑠維がふて腐れる様を見た璃音は、堪らず噴き出して笑ってしまった。 「なんだよ、璃音までっ」 「だって、瑠維がふて腐れてるのが子供っぽくてさ…。  ふふ…っ、あはははは…っ」 「まったくだ」  龍嗣も弓削も小鳥遊も笑い出し、瑠維一人が頬を膨らませてしまった。

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