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「県警…の?
みあさん、それは…」
「そ。
白川先生のトコの千尋。
身辺警護から解かれて、昨年から県警に配属されたの。
お客様じゃない、最も実戦向きのキャリアになってるから、見ていて楽しいのよ。
事件の時について行ってるし、璃音が開発したキットを届けたりもしてるワ。
ちょっと前には、銀行強盗の捜査なんかもしてたワねぇ」
だから見に行っていると言うが、抜かりのない猫の事だ。
ちゃっかり裏から捜査に参加しているのだろう。
「あの子も水上以外の人間に惹かれてる。
執着癖の強い水上の子供が、外の人間と番いになり始めたっていうのは、何かの予兆なのかしらね」
璃音に視線を向けると、いつの間にか龍嗣の膝の上で寝入っていた。
極度の緊張とフラッシュバックで疲れたようだ。
深く寝入っているようで、ピクリとも動かない。
「あらあら。
エロ魔神に抱っこされて寝るなんて、かなり久しぶりのことだワ」
クスクス笑うと、猫は弓削の膝からヒラリと降りた。
「キッチンに行きましょうか。
瑠維、調理師免許取ったんでしょ?
どれ程の力量なのか、見せて頂戴な」
「お、おう」
猫に促され、三人がソファーから立ち上がる。
「晩御飯、期待してるよ」
「任せとけ。
目茶苦茶美味いの作るし。
そんかわし、璃音が風邪引かねえようにしてくれよ?」
「ああ」
龍嗣が微笑んで返すと、少し複雑そうな顔で、瑠維が出ていく。
「では、旦那様。
璃音様をお部屋の方へお願い致します」
「ああ。
ゆっくり寝かせるよ。
小鳥遊さんもかなり疲れてるだろうから、ゲストルームで休ませてやってくれ」
「はい。
承知いたしました」
弓削と小鳥遊も出ていき、龍嗣は璃音を抱き上げた。
無防備に眠る顔が幾分幼く見えて、つい面映ゆい気分になる。
「可愛らしい寝顔は今だ健在だな」
リビングから出て階段を上り、璃音の部屋へ向かう。
窓を開け、風の通りを変えて、薄い方のカーテンを引く。
それから、璃音をベッドに横たえたあと、体を起こそうと思ったのだが、左手がシャツを掴んでいた。
外す理由も無いので、そのまま隣に横たわる。
艶やかな髪を撫で梳いている内に、甘い香りと静かな寝息に誘われて、龍嗣も眠りの淵に落ちて行った。
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