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木天蓼(またたび)に酔う猫のように、龍嗣にくっつく璃音。
「ね、すっごいのが出来たら、ご褒美欲しいなぁ…」
「何がいい?」
暫く考え…。
「新婚旅行とは別に、龍嗣と二人だけでラブラブな時間を過ごしたいなぁ。
お互い絶対に仕事持ち込み禁止にして、一緒に過ごしたい…。
一日だけでいいから…」
それは、かなり安上がりなご褒美じゃないのかと、龍嗣は半ば呆れる。
「それだけでいいのか?」
「それだけって…、充分我が儘でしょ」
「我が儘とは言わないだろう?
もっと、高いものをねだるとかないのか?」
「………欲しいのは、龍嗣だけだもん」
「……………」
蕩けそうな顔で漏らしたのは、呆れるほどに率直な言葉だ。
極上の快楽と、莫大な富を伴侶に与えるという水上の子供たち…。
その中で最も血が濃く、最高の教授陣を投入して育て上げられたのが璃音だ。
尽くし、巨万の富を捧げる子供…。
驕らず、当然のものとせず、それ以上の愛情を璃音に注いでみせる…。
「璃音が欲しいだけ、二人っきりの時間を作るよ。
そうだな…。
だれにも邪魔されないように、湖の傍の別邸へでも篭ろうか」
「ほんとう…?」
漆黒の瞳が煌めく。
「ああ。
璃音が欲しいだけ、時間を作る」
「嬉しい………っ」
抱きついてきた璃音の顔が、甘く甘く蕩けていく。
「…………っ、嬉しい…。
僕、いっぱい愛してる…っ」
見返りを求めない、深い愛…。
幼い頃から恋をして、龍嗣だけを愛し抜いてくれた子供…。
ならば。
生涯かけて、悦ばせてみせようではないか。
「愛してるよ」
はくり。
「あ………ッ!!」
薔薇の蔓が刻印された首筋を甘く噛む。
そろり…。
薄く歯形がついた場所を舐め上げ、求愛の甘噛みに震える体を抱きしめる。
「君が捧げる以上に愛していくからな…?」
何度生まれ変わろうとも璃音を娶り。
幾千、幾億の夜を越え……。
目が眩む程の深い愛を注いでいく。
そうして、魂が溶け合うほどに篭絡してみせる。
何度も唇を契り、永遠を誓い、龍嗣は璃音をきつくきつく抱きしめた…………。
瑠璃色の誘惑
-END-
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