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始まりの6月9日(土)
気がつくと俺は家を飛び出していた。
朝、いつものように大学へ行く準備をしていた。今日の授業は夕方からなので時間になるまでリビングでくつろいでいると、突然母さんから驚くことを言われた。
「相川 さんとこの忍 くんが、癌 で入院したって……」
突然の事で思考が追いつかない。何を言っているのかわからなかったが、母さんの深刻そうな顔からして嘘は言っていない……。
俺は病院の場所を聞くと家を飛び出し全力で走った。
忍は高校からの友達で俺の片思いの相手。ずつと好きだった……。でも叶わない恋だと知っていた。告白しようと思ったこともあったが、その事がきっかけで一緒に居れなくなるのを恐れ、俺はこの気持ちを抑えた。
忍は大人しいが明るく誰にでも優しくよく笑う。一昨日まであんなに元気だった忍が癌……。考えれば考えるほど不安が募った。
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病院に着くと受付で忍のいる病室を聞き慌てて向かう。
病室につくなりドアを勢い良く開け「忍」と大声で叫んだ。
「暁斗 ……!」
驚いた顔で俺の名を呼ぶなりすぐさま「病院ではお静かに。」と呆れた顔で言われた。
「だってお前……癌って……大丈夫なのかっ!?」
走ってきたせいか、息が切れて途切れ途切れになった。
「大丈夫だよ。ちゃんと治療したら良くなるみたい……心配かけてごめんね暁斗」
「そっか……良かった。」
元気そうな忍を見て俺はやっと落ち着いた。
病室は小さな個室で忍だけだ。ベッドの横にはイスが置いてあり、それに座る。一息つくとくすくすと忍が笑っていた。
「ッなに笑ってんだよ」
と俺はムッとした態度できくと「だって、暁斗のあんなに慌ててるとこ初めて見たから……ククッ……だめだ、思い出すだけで笑える。」と笑いながら俺に言う。
「そりゃお前、友達が癌で入院したなんて聞いたら驚くに決まってんだろ!」
俺がムスッとしていると「ごめんごめん」と笑いながら謝られ、まぁいっかと俺も笑った。
「そう言えば暁斗、お前大学は?今日授業とってる日じゃなかった?」
「今日は夕方に一コマだけある」
俺は疑問そうに聞いてきた忍にそう答えた。そんな話をしているとカバンがないことに気がつき「あっ!」と声がでた。どうしたんだよと忍が聞いてきた。
「家にカバン置いてきた。お前の事母さんから聞いて慌てて家を出たからそれで……」
と言うと忍はまたくすくす笑って「ほんと、お前らしいね」と言われだから笑うなよと言い軽くデコピンしてやった。
「そんじゃ、忍が元気なこともわかったし一回家に戻らないとだからそろそろ行くわ。明日学校休みだし、昼からまたお見舞い来てやるよ。」
俺がそう言って椅子から立ち上がると「うん、ありがとう。また明日暁斗」と言うとばいばいと手を振った。俺もまた明日と言って手を振り病室をでた。
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家に着くと母さんが「忍くん大丈夫だった?」と聞いてきた。俺は元気だったよと伝えると母さんは「そう……良かったわ」 と安心したような顔をしていた。
「明日大学無いから昼からまた忍のとこ行ってくるわ」
「なら、お見舞いにフルーツ持って行ってあげなさい。明日、リビングの机の上に用意しとくから。忘れずにね」
と言われはいはいと返事をして「そんじゃ、授業あるから行くわ」とバックを持ち家を出た。
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