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第1話 イイことしよーぜ?
「ちょ、ばか!何やって…」
「何って」
こつんと鼻先がぶつかる。
シトラスの柔軟剤と体臭が混ざった、嗅ぎなれたこいつの匂い。
俺が持ってる男の象徴から手を離さないまま、
「なあ、イイことしよーぜ?」
すれ違った男女が三度見する国宝級の顔を、まるで蕾が膨らんで花咲くようにほころばせたのだ。
そもそも、なんでこんなことになったのか。
少し遡って思い出してみる。
それは、今日の下校のときだ。
「大成(たいせい)」
女子の黄色い悲鳴をBGMに、後ろの扉からよく通る声で呼ばれた。
物心ついた頃から一緒にいる幼なじみの遊矢(ゆうや)だ。
俺は目をぱちくり瞬かせる。
遊矢が俺の教室にいる、という非日常な光景。
少し考えてからややあって、遊矢のクラスのホームルーム、今日は早かったんだなって思った。
いつもは俺が迎えに行くから。
「おー、いま行くー」
急いで荷物詰め込んで、鞄を肩にかけて小走りで向かった。
隣の席のやつに「じゃーなー」って手を振ってから。
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