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第1話ー2
遊矢のとこまで行くと、少しの間だけでもう女子数人に囲まれていたんだ。
しかもみんなかわいい。
「遊矢くーん、もう帰るのぉ?」
「ウチらと寄り道してこーよ」
「ずるーい、私ともぉ」
ふわふわ見た目に反してぐいぐい遊矢の腕を掴み豊満な胸を惜しげも無く押し当てていて。
両手に花とはまさにこのこと。
クラスのやつが好きっていってた学園モノのAVに確かこんなシーンあったな、とか考えてた。
もちろん、心のうちに燻(くすぶ)る黒いものは見て見ぬふりして。
整った顔立ちの遊矢は身長(タッパ)もあって運動もできるから、それはそれは女子人気が高い。
モテることをひけらかしたりしないから男子だって悪く思うやつは少ないんだ。
俺の自慢の幼なじみ。
お互いの隣はお互いしかいない。
「まったくよーぉ、」
呆れ返ったような声で、癖のないサラサラな髪を靡かせて腕に巻きついていた有象無象の女子をやんわり、でもしっかり剥ぎ取るスレンダーな幼なじみ。
「俺は今から大成くんとおデートすんの。ひとの恋路邪魔すんな?」
俺が肉食女子の迫力にいつもながら気圧されてると、急に女の子たちをほどいた手で引っ張られ。
そのまま胸にダイブするかと思ったらくるりと半回転、後ろから抱きつかれて。
首筋から背中にかけて遊矢の熱がじんわりきた。
あの爽やかシトラスの、遊矢の香りにふわりと包まれる。
一瞬で顔を出した、胸の奥底にしまい込んでいる想い。
喜びと、悲しみと、嘆きと、楽しさを混ぜたそれは俺が飼い慣らすには手に余る代物で。
どうしようもないから封じ込めているのに、不意に扉を蹴破って、あるいは蹴破られて出てきてしまう。
………………………………どき、じゃねえし。クソ、俺の馬鹿野郎。
そんで遊矢も、馬鹿野郎。
当たり前のように俺のつむじを顎おきにしている幼なじみを仰ぎ見て、睨みつけて、
「ばーか。誰がお前なんかとデートするかっての」
精一杯の憎まれ口を贈った。
心拍数やばい。バレてねぇか?って焦りながら。
──────この時、忘れてたんだよな。
こいつの顔面の凶器レベルつーか、
破壊力のことを。
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