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第1話
とある一日
「理央 くーん!お願いがあるんだけどぉ…。」
こいつが猫なで声で話しかけてくるときは大抵面倒なことしかない。
とりあえず聞こえなかったふりをしておこう。
「あのね、やっとネットで注文しておいたものが届いたんだけどぉ…」
「嫌だ」
「まだ何も言ってないじゃん!」
「お前の言いたいことはだいたいわかる」
「え…!理央君かっこいい!」
「そういうことじゃない」
「今回はね!『ドキ夢』のエイダン様!理央君にそっくりで僕の推しなんだ~だからね、絶対
似合うと思って!」
「無理」
ドキ夢とは、『ドキドキ夢の王子様』という今女子の間で人気の乙女ゲーである。
その乙女ゲ―に出てくるキャラのコスプレをしろとしつこく言ってくるこいつは、男だが乙女ゲ―にはまってしまい、数多の乙女ゲ―を攻略している変わり者。
そしてなにかと俺にコスプレをさせたがる。
「ねぇ~お願い!ちょっとだけでいいから!」
「お前のちょっとはちょっとじゃねぇんだよ…」
「じゃあこっちでいいよ!同じくドキ夢のアル様!かわいい系なんだけど理央君もかわいいから似合うと思って!」
「はぁ、そういうのは俺じゃなくてお前のほうが似合うだろ。一回自分で着てみろよ」
「無理無理!僕のコスプレなんて需要無いから!」
「いや、需要はある」
「え、なに?」
「俺が待ち受けにする」
「理央君!…ときめいちゃうけど恥ずかしい!!」
そう、なぜこんなに友達にいたらめんどくさそうなこいつと一緒にいるのか。
それは俺がこいつ、ひなたと恋人関係にあるからだ…
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