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第1話
サッカーが好きだ。小学校も中学校もサッカーばっかりしていたし、高校に入学してもサッカーばっかりしている。誰よりも遅くまで練習したし、部活が休みの日もサッカーをするし、何だったら夢の中でもサッカーをしているくらいだ。
つまり何が言いたいかと言うと、俺はサッカーにしか興味がない。
そんな俺は学校祭当日……イベントが開催されている一つのステージを見て、心が震えた。
『今年のコンテスト優勝者はッ! 三年二組、ユキちゃんですぅうッ!』
高らかに宣言された、優勝者の名前。興奮気味にマイクを握っている人は、放送部だろうか。いや、そんなことはどうでもいい。
名前を呼ばれた優勝者と思しき生徒がゆっくりと、ステージの中央に立つ。
『三年二組、ユキですっ』
少しハスキーな声に、若干キツイ目付き。長い髪は黒髪に見えるけど、ほんのりと青みがかっているようにも見える。どうやら、あの子が優勝者で間違いなさそうだ。
『ユキに投票してくれた皆~っ! 本当に、ありがと~っ!』
美少女コンテストと思われるイベントで、ユキちゃんは白雪姫の衣装なのか……コスプレをしていた。上半分は水色で、スカートは黄色……俺の中の白雪姫は短髪のイメージだったけど、長髪も全然ありだ。赤いリボンの付いたカチューシャも、よく似合っている。
『まだまだ学校祭は続くから、楽しんでね~っ! あっ! ちなみにユキのクラスは喫茶店で~すっ!』
自分のクラスを宣伝することも忘れず、ユキちゃんは笑みを浮かべたまま手を振った。
『高校生活最後の、ステキな思い出になりました~っ!』
ペコリと頭を下げて、ユキちゃんがマイクを司会者に返す。ユキちゃんはもう一度だけ手を振って、観客達を眺めた。
――瞬間、目が合う。
息を呑む間もなく、瞬きもできずに……永遠のような一瞬が終わる。
サッカーにしか興味の無かった俺、織戸 は……謎の美少女先輩『ユキちゃん』に、恋をした。
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