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常連の鹿崎さん
そこに助け船のようにジャイアントパンダの被り物をしたあまっちが現れた。
被り物からちらりと見える艶のある黒髪に色白の肌、ピスタチオみたいな二重の瞳でこちらを見て、たらこ唇が柔らかく開く。
「鹿崎さん、よろしければヒートダウンエステを受けていきませんか?」
ヒートダウンエステはΩの発情期前に行えば、発情の辛さを軽減させることができる施術のこと……人によって完全に抑えることができるすごいものなんだ。
「ええんっすか? あっ、でもお金」
「今回はサービスいたします」
「ほんまっすか? では、お願いしやす!!」
白い歯を光らせて笑う鹿崎さんを見て、あまっちにありがとうと口パクで伝えると、両目ウインクを返してくれた。
「ちゃんと選んどいてよ〜すぐるくん」
「はいはい、わかったわかった」
「ほんまにわかってんの?」
ケンカしているのか、イチャイチャしているのかわからないやり取りにちょっと羨ましくなる。
昔はあんな感じだったんだ、ボクとけんいぬ。
「キョウ!」
調香室を出て行こうとしていた鹿崎さんを馬喰さんがいきなり叫び出した。
ビクッとしながら振り向く鹿崎さんをクスッと笑った馬喰さん。
「発情抑えたとしても、オレはとことんヤッたるからな」
覚悟しときや?と低く艶めかしい声で付け加え、ニヤリと笑う横顔が見える。
すると、褐色の鹿崎さんの顔が瞬時に紅くなり、奥二重の目が潤み、口がへの字に曲がる。
「もう〜勘弁してぇや……アカンよ〜」
身体もたんし、もう……なんてうだうだ言いながら鹿崎さんは部屋を出ていった。
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