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愛してるからやろな
「なぁ、アンタってΩ?」
前髪がガタガタの黒のショートヘア、ボクより大きい瞳でボクを見つめる馬喰さん。
ボクはフェロモンが出ないからよくβに間違われるのに、一発で当てられてびっくりした。
「なんで、わかったんですか?」
「勘……当たったか?」
ニヤリと笑う馬喰さんに不服そうにはいと言うと、クスクスと笑い始めた。
「大丈夫や、流石に取って食おうとは思わんわ」
馬喰さんは両手を組んで前のめりになり、ふんっと鼻を鳴らす。
「鹿崎さんとはどれくらいの頻度で性行為をなさっていますか?」
「発情期関係なくほぼ毎日やな」
「フェロモンのせいですか?」
「それもやけど、オレがやりたいからヤッてんねん」
「なぜ?」
調香の参考に聞いているはずなのに、Ωがボロボロになるほどする理由が知りたくて問いただしてしまうボク。
でも、馬喰さんは平然と衝撃なことを言う。
「愛してるからやろな」
ボクの想像もしなかった答えで思わず、はっ?と素っ頓狂な声が出る。
「じゃあ、もし鹿崎さんが何かの事情で発情期がなくなり、フェロモンが出なくなっても……毎日ヤりますか?」
何を聞いてるんだと後で思うかもしれないけど、聞いてみたくなった。
馬喰さんは真面目な顔をして、おおと声を出した後に続ける。
「発情するように色んなことをするわ……それはそれで楽しいやないか」
目尻をクシャッとしながら、歯を出して笑う馬喰さんにボクの心臓を掴まれた気がした。
「せやから、こんな胡散臭い香りにオレの性欲が抑えられるわけないから……これ、なかったことにしてくれや」
クリーンミントのムレットを手に取って軽く嗅いだ後、大きくくしゃみをした馬喰さん。
「まぁ、キョウの好きな香りかつ発情しやすくさせるやつを作ってくれんなら協力するけど?」
どうする、あんちゃんと悪い顔をして笑う馬喰さんに、敵わないなとボクは心から思った。
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