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第1話 出会い
昨夜からの雨はあがり、古い日本家屋の庭先でむせかえるような草木の匂いを嗅ぎながら、ぼんやりと辺りを見廻すオレ。
庭の一角では、土塀に寄り添う様に咲く 桔梗の花が。薄紫のしとやかな姿は、この純和風の庭を引き立てていた。しかし、そこ以外は手入れが出来ないのか、雑草が生い茂り高級そうな庭石を覆い隠している。
「おはようございます。お迎えに参りました。」
カラカラツと引き戸を開けて玄関口から声を掛ける。到着時間を知らせておいたので、鍵を開けてくれていた様だ。
しかし、踏みしめた敷石の固さはあの日と同じように来る者を足止めする。
「あ、ご苦労様です。」
雨戸の閉められた薄暗い廊下の向こうで、若い声だけが響いた。
- あ、、、
目を見張るオレの顔に気付き、その若者もしばらくオレを見る。
「……どうも、」と言って頭を下げると、彼は一瞬うつむき、又すぐに顔を上げた。
「ストレッチャー、そちらの縁側につけましたから、準備のほう宜しければ、搬送させて頂きます。」
同僚の長野さんが言えば、「はい、結構です。宜しくお願いします。」と言って、オレたちを促す様に奥の部屋へと案内してくれた。
障子戸を開けて目に飛び込んできたのは、介護ベッドに横たわる一人の中年男性。
あの日の面影はなく、骨と皮だけの白髪の男性は、オレ達に顔を向けると、コクリと首だけを動かした。
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